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花闇 / 皆川博子
幕末の世相を反映し、その芸において爛熟の極みに昇りつめた歌舞伎役者、三世澤村田之助の物語。 美貌と才能と人気を欲しいままに、江戸歌舞伎最後の花と謳われた女形役者。 その花の真っ盛りに脱疽を発症し、次々と四肢を切断。 それでも舞台に立ち続けるという凄絶な生き様を晒した人物。 けれど、芸に対する絶対的な自信、強烈な自惚れが魂に宿っているかのようで、“苦悩”とか“悲壮感”とは何か違うような。 そしてどこかマゾ的というか・・四肢を失った己に酔っているんじゃないかとすら思えるほどの役者魂なのです。 だからこその危険なまでの美しさ、だからこその最期という気がしてしまう。 傍らからの哀れみだとか敬意だとか、ヒューマニズム的感慨は一切放棄したくなります。
対照的に退廃の乱舞に閉塞感、危機感を抱き、やがては文明開化の流れを受けて歌舞伎の地位と権威を高めることに貢献した人物として、九世団十郎が描かれている。 歌舞伎役者の地位や自分への評価に対して屈辱的な思いに苛まれ続けた団十郎の胸の内は、これもまた、決して田之助には理解できないことなのかもしれません。 団十郎によって、田之助を輝かせた江戸歌舞伎の仰々しさや血生臭さや淫猥さは排除されていく。
ただただ滅びゆく美しさを高い純度でもって見せつけてくれた作品。 田之助と江戸歌舞伎の心中物語でもあるかのようでした。


花闇
皆川 博子
集英社 2002-12 (文庫)
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★★★
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