六月の夜と昼のあわいに / 恩田陸
SF、ファンタジー、ホラーのあわいを縫うような幻想的な“夢十夜”風短篇集。 恩田さんは、実はノン・ミステリの方が好みです、わたし。 脳内パノラマ全開で、ともすればインスピレーションの洪水にフラフラになりそうですが、そこもひっくるめてこの波長に呑み込まれることが悦びなのです。
フランス文学者の杉本秀太郎氏の序詞(詩・俳句・短歌)と、新鋭画家による現代絵画とのコラボ企画として誕生した本書。 序詞と絵画という二重の制約に閉ざされた純度の高い空間をイメージの奔流が縦横無尽に駆け抜けていました。
太古と未来、宇宙と深海、喧騒と静寂、黄昏と夜明け、漆黒の闇と白い雪・・ 濃淡の色彩がざわめく万華鏡のような世界は、有機体、生命体の神秘が醸し出す不穏な美しさと懐かしい肌触りに満ち、永遠のような瞬間がさざめいていて、五感を絶え間なく揺さぶることにかけて容赦がありません。
時空の歪みに滑り落ちる「Y字路の事件」や、辛辣なユーモアの効いた「窯変・田久保順子」、迷い家の怪異を描いた「酒肆ローレライ」といった比較的読み易いものもよかったのですが、風呂敷の唐草模様から止めどなくイメージが連鎖し暴走していく「唐草模様」とか、気だるく優しく不気味な終末観の漂う「約束の地」のような幻夢譚も好き。 あと灰色の平原を走る列車のコンパートメントで見知らぬ男女の意識が錯綜する心理劇タッチの「コンパートメントにて」もいい♪
一番のお気に入りは民話テイストの「夜を遡る」かな。 金属の廃材の寄せ集めでできたガラガラドンや、元は異国人で子供の守り神となったペドロさんがいたりして・・ 大きく蛇行する川のほとりの村落の物語をもっと紡いで欲しいなぁ。
あっでも、これ長編で読みたいなぁ〜と感じさせる短篇になってしまいがちなのが、良くも悪くも恩田さんなのですが、今回は一味違うぞって感触。 どれも掌編といっていい短さなのですが、一揺らぎの波動を淡く心に残していくような小品の魅力がキラっと発揮されていたんじゃないかと思いました。


六月の夜と昼のあわいに
恩田 陸
朝日新聞出版 2009-06 (単行本)
関連作品いろいろ
★★★
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