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天才までの距離 / 門井慶喜
天才たちの値段」の嬉しい続編。 美術鑑定ミステリの連作集です。 主役というか、狂言回しとなるアシスト役の佐々木先生が関西の美大に准教授の職を得たことで、東京で活躍する天才美術コンサルタントの神永とは離れ離れになってしまい、もっか“遠距離敬愛”中です。
神永への絶対的な信頼と尊敬が、依存心へと変わってしまうことを恐れつつ、悶々と距離感を模索している佐々木先生の独り相撲的イジマシさに比べると、常に凪のように優雅でニュートラルなイメージの神永ではありますが、わたし前回、美術品の良否・真贋を見さだめる天性の“審美舌”は、実は彼流のハッタリなんじゃないかと勘繰ったことをお詫びします。 誤読でした。 明らかに戦略の一部として役立てることもあるんですが、まずは本当に異才ありきだったんですねー。(だから最初からそう言ってるってばっ!)
舌に甘みを感じながらもその拠りどころが分からずに苦悩する顛末が、今回、描かれていて、しかも経験によって練磨されていく発展途上の能力であるらしいのです。 何を以て価値とするのか、そこにこのシリーズの深いテーマが一貫して流れているのかもしれません。
岡倉天心の直筆画との触れ込みの救世観音図、平福百穂(岩波文庫の表紙デザインで有名な画家)の手になると思しき切り絵、謎多き西洋アンティークの柱時計、牧谿の贋作と目されている水墨画、レンブラントの代表作“テュルプ博士の解剖学講義”の模写絵など。 今回も多彩なモチーフから、それぞれの美術品の存在証明と背景との関係証明という手順を踏んだ推理・鑑定が展開されていきます。 その合間にも、大阪の景観に関する文化的・美術的考察や、紙の発明と伝来についてなど、蘊蓄密度が飽和寸前くらいにてんこ盛りなんですけれど、キャラクターが押し並べてほっこりしているからなのか、論法がすっきりしているからなのか、アイデアの妙味に絆されるからなのか、わたしは凄く居心地がよくて、このシリーズ大好きなんです。 ただ、美術的コア領域以外が大胆に削ぎ落とされているというか、そこが弱いと感じる向きもあると思うので、好みは分かれるかなー。


天才までの距離
門井 慶喜
文藝春秋 2009-12 (単行本)
門井慶喜さんの作品いろいろ
★★★
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C O M M E N T
あけましておめでとうございます。
そして,お久しぶりです。
今年も宜しくお願いいたします。

門井慶喜の作品少し気になってました。
美術系ミステリ好きなので今度読んでみようと思います。
北森鴻みたいな感じだとうれしいのですけれど。
早く文庫落ちしないですかねー。
| 森山樹 | 2010/01/09 |

森山さん、あけましておめでとうございます。
こちらこそ、ご無沙汰しております。
今年は、出不精を改善したいものです><。
どうぞ懲りずにお付き合い頂けると嬉しいです。

蘊蓄飽和状態は、北森さんといい勝負かも!
きっぱり美術系なんですけど、雰囲気が柔らかくて読み口がよいです。
そうなんですよー。 新作出たので期待してたんですけど、
前作の文庫落ち、しませんでしたねぇ・・残念;;
地味なシリーズですが、熱い固定ファンを引き寄せそうなものがあるので、
そろそろかなーなんて、それとなく期待継続中です^^;
| susu | 2010/01/09 |









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