毒入りチョコレート事件 / アントニイ・バークリー
[高橋泰邦 訳] だいぶ以前、貫井徳郎さんの「プリズム」を読んで以来、そのルーツ的作品として忘れ難く脳内にインプリンティングされていて、ずっと心の中で熟成させていた本です。 新装版を図書館で見つけて喜び勇んで借りてきました。
これねー。 未読の方は予備知識なしで読むことをお勧めしたいです。 以下、内容に触れるのでご注意ください。
ロジャー・シュリンガムが主催する“犯罪研究会”の知名の士たちが、スコットランド・ヤードの手に余った難事件の謎解きに挑みます。 一人また一人と6人が順番に自説を披露しては覆されながら、甲論乙駁の推理ゲームが繰り広げられます。
昔気質の弁護士、女性ドラマチスト、皮肉屋の推理小説家、理知的な閨秀作家・・と、探偵志願者たち各々に色付けされた個性によって、論拠の全く異なる6通りの立論と仮説の証明が展開され、何を以って裏付けとするのか? 自論に合わせて証拠事実を歪めてはいないか? 等々、検証眼のスイッチは常にオン。
輪郭線を引いては消し、組み立てては壊しを交互にめぐる道楽者たちの知的推理演習。 成果の実をもぎ取ることよりも、技巧的で多彩な工程を愉しむことに特化した名作古典。
どうやらバークリーは古式ゆかしい探偵小説に限界を感じ、云わば皮肉な意味合いを込めて上梓した節があるようなんですが、アンチ本格というよりは超本格というか・・ 離れ業をやってのけ、逆に新たな道を切り開いたメルクマール的作品として、今も燦然と輝いちゃってるところが皮肉の微笑み返しのようです^^
全然、時間に汚されてないです。 わたしなんか6人の推理のプレゼンに毎回聞き惚れ、会員たちの駄目出しにその都度唸ってました;; 段取りがまた、計算し尽くされているんだよねぇ。 何を誇張し何を隠蔽するかという選択一つで思いのままの説得力が引き出せるって、ミステリに限ったことではなく、奥深くて怖いです。 そこに無防備でありたくはないなと思うのでした。


毒入りチョコレート事件
アントニイ バークリー
東京創元社 2009-11 (文庫)
関連作品いろいろ
★★★★
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