園芸家12カ月 / カレル・チャペック
[小松太郎 訳] 1918年から1938年の20年間は、チェコ文学の最も華やかな時代だったそうです。 当時を代表する文化の第一人者であった著者の珠玉作。
ページを閉じてしまいたくなくて・・ いつまでもいつまでも慈しんでいたいような・・ なんかもう、宝物の一冊。
園芸マニアの貪欲で懲りない(しかし愛すべき)生態を諧謔たっぷりに描いた歳時記。 植え付け、植え替え、剪定、苗選び、暑さ寒さや雨風や日射し対策、病気予防や虫退治、土壌の改良・・と、全く気を抜く暇のない一年なのです。
四季は廻り、命は循環し、ゴールというものがありませんが、報われないことだらけでもなんのその。 土いじりへの飽くなき情熱に身を捧げてしまう哀しき性分よ。
花を愛でたり、果実を収穫することが目的というより、そこに至るための苦心惨憺、一喜一憂のプロセスが楽しくて仕方ないみたい。 とっても幸せそうなんですもん^^
もし園芸家がエデンの園にいたら、知恵の木の果実を食べることも忘れ、神様の目を盗んで地面の素晴らしい堆肥をちょろまかせないものかと考えるんです! もし園芸家が自然淘汰で進化していたとしたら、背中を曲げるのは難儀なので無脊椎動物になっていたに違いないし、置き場がなくて足が邪魔にならないように翅が生えていたに違いないのです! もし園芸家が次の世に生まれ変わったら、花の香に酔う蝶ではなくて、大地の珍味を求めて土の中を這いまわるミミズになります!
変化と活気のある創造的な計画でいっぱいの12カ月は、詩情溢れる世界と地続きになっていて、春のオーケストラは芽の行進曲を奏で、雨は銀の鈴を鳴らし、散り残った一葉は戦地に翻る歴戦の旗となって風にふるえ、ダリアの聖人は聖人伝の中で輝いている・・ さざめく自然は空想の翼に乗って軽やかに舞い、小さな庭は瞬く間に魔法の花園へ・・
押しつけがましさのないポジティブ・シンキングが読んでいて心地よいです。 一見、休息や後退のようであっても、それはもっと大きな前進の中に組み込まれた大事な役割の一部であるのだと。 求め続けていられることが命の美しさなのだと・・ 園芸家を通して人生の素晴らしさや、根源的な労働のよろこびを、まるで鼻歌のように謳ってくれているようで・・
生涯の協力者であったというヨゼフお兄さんの挿画と息がぴったり! 更にいえば訳者の小松太郎さんも含めて、なんなんでしょう。 この一体感は!


園芸家12カ月
カレル チャペック
中央公論社 1996-03 (文庫)
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★★★★
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