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小さな男*静かな声 / 吉田篤弘
百貨店に勤務する“小さな男”と、深夜ラジオのパーソナリティを担当する“静かな声”の女性。 都会の片隅の慎ましやかな男女の日常を、卓上灯のようにそっと照らし、憂愁や倦怠や空虚や希望の入り混じった二人の主人公のロンリー・ハーツな思惟の行く立てを、交互に辿っていく二本立ての物語。
心のモラトリアム地帯に身を置いて、危険を避けつつ控えめに生き延びているような毎日。 こぢんまりと親密なメランコリーに埋没し、自身の弱点の内部にしっぽりと安らぐことは、それはそれで美味なのだけれども、停滞が過ぎれば自家中毒を起こして倦んでしまうことだって無きにしも非ず。
物語が佳境に入ると、ひとつ処に留まっていた二人の精神が、前進と変革を求めて、殻を破って動き出す情景をしなやかに浮き上がらせてゆきます。 いざその時に糧となるのは、コツコツと脈々と刻んできた生真面目でささやかな繰り返しの積み重ねなのかもしれない。 扉を開き、窓の外を覗き見て、自己と世界の境界線を踏み越える確かな足音が聞こえてきそうな展開がしみじみと素敵。
共通の知人のミヤトウさんを媒体として、二人の人生が働きかけ合う顛末が微笑ましかったです^^ たとえ実感は持てなくても、こんな風に見ず知らずの人と気脈が通じていたりすることが本当にありそうに思えてきて、繋がっていないようで繋がっている現し世の不思議に想いを馳せたくなりました。
物語を彩る細部の意匠とでもいいましょうか。 味気ない日常の数多の断面に、ホログラムのように詰め込まれた感性の閃きを堪能。
お気に入りは、ひとつひとつ街灯に明かりを灯していく“点燈夫”の話(ミルハウザーの「私たちの町の地下室の下」を思い出したなー)や、デパートの舞台裏に広がる従業員専用通路の迷宮や、お揃いのムンクの叫びネクタイを締めたミステリアスな男たちとか、数学教師のようにあらゆる角度から乗り換えの数列組み合わせを提示する車掌さんのアナウンスとか・・♪ それとなく地面数センチくらいを浮遊しているような肌触りが快感です。


小さな男*静かな声
吉田 篤弘
マガジンハウス 2008-11 (単行本)
関連作品いろいろ

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C O M M E N T
こんにちは。
吉田篤弘の作品って好きなんですが,
これは全くのノーマークでした。
文庫以外は結構チェックからもれちゃいます。
マガジンハウス社の単行本なんて新刊の確認しないし(汗)。
ミルハウザーは私も好きなので楽しみです。
是非早期に文庫化してほしいものです。
それか図書館で借りちゃうかな。
| 森山樹 | 2010/03/15 |

吉田篤弘さん、よいお味ですよねー。
わたしも、時々無性に読みたくなるんです。
これは、かなり現実ベースな作品なのですが、
吉田エッセンスは随所に感じ取れましたよ^^

“点灯夫”の存在がとても素敵でした。
ミルハウザーの大好きな短篇、
「私たちの町の地下室の下」に登場する点灯夫を思い出してしまいました。

そういえば「パロール・ジュレと紙屑の都」なる新刊がもうすぐ出るようですね♪
タイトルからして、思い切りそそられてますw
| susu | 2010/03/15 |









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