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偽のデュー警部 / ピーター・ラヴゼイ
[中村保男 訳] (↓序盤の展開にもろ触れてますのでお気をつけ下さい↓)
1921年、英国からニューヨークへと大西洋を横断する大豪華客船の船上で怪死事件が発生。 偶然にも(!)乗り合わせていた元スコットランドヤードのデュー警部に犯人検挙の期待が集まります。 図らずも調査の指揮を任されることになってしまった彼、実は“訳あって”偽名を使って乗船した別人だったのです・・
因みにデュー警部は実在の人物で、英国犯罪史上に名を残す“クリッペン(妻を殺害し愛人と逃避行を企てたとされ船上で逮捕された医師)事件”で武勲をたてた伝説の警部。 ハーレクイン病な愛人に唆され、妻を葬り去るべく、クリッペン博士さながらの悪計をめぐらせてモーリタニア号に乗船した我らが偽のデュー警部は、むしろ探偵というよりお尋ね者の分際で、ミイラがミイラ取り(?)よろしく、なんとも喜劇じみて皮肉めいた立場に仕立てられてしまいます。
でもこれがね。 我儘な妻に鍛えられた持ち前の聞き上手な性分や妙な順応性や折り目正しいお人好しぶりを発揮して、のらりくらりと名探偵しちゃってる危なっかしさが読んでいて楽しいったらないの^^ 
ってなわけで、序盤は変則気味の倒叙ミステリを思わせる滑り出しなのですが、いやいや・・さに非ず! 逃げ道のない船上に閉じ込められて、顔の見えない犯人の存在に恐怖する船客や船員と、読者もすぐに一体化させられてしまいます。 そしてエンディングのどんでん返しが小気味良くて好きだー。
妻と愛人・・無敵にDQNな二人の女性にへしゃげられながら、何気にしぶとく立ち回る“偽のデュー警部”を筆頭に、様々な思惑を抱えた登場人物たちが粒揃い♪
9年間の滞米を経てロンドンに凱旋帰国するチャップリンと、第一次大戦中に魚雷を受けて沈んだルシタニア号。 冒頭に披露される二つの挿話が、どんな風に物語に絡んでくるのかこないのか、ぐいぐい引っ張られてしまいます。
狂騒の時代に沸くアメリカ新世界と、未だ栄華の名残り褪めやらぬ大英帝国の力学が、目映いばかりの洋上に集約されているような香気を満喫。 辛辣な皮肉を何食わぬ顔で上質なユーモアに昇華させてしまう、このクールなお手並みといったら! だから英国ミステリは止められないんだ・・と思わせてくれる逸品でした。


偽のデュー警部
ピーター ラヴゼイ
早川書房 1983-01 (文庫)
関連作品いろいろ
★★★
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