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罪深い姫のおとぎ話 / 松本侑子
グリムとアンデルセンの誰もが知っている童話を下地にしたパロディ短編集7編。 ちょっとエログロを加えた大人の童話という感じなのかなーと気軽に手に取ってしまった。 確かに表面的にはそのとおりだし、物語自体、美しくて魅力的だ。 でもこの作品の下地である原典が書かれた当時の時代背景が、読み進めるうちに徐々に物語を侵食しだすというか・・ 読み終えてみるとパロディを通り越し非常にシリアスなメッセージ小説に変貌している。
残酷な描写が少なからずあるけれど、それは原典に忠実であり(と筆者があとがきで述べている)、どれもが罪に対する罰という側面を持っている。 その罰に値する罪の基準も現代人の感覚とはかけ離れすぎていて恐ろしい。
時代は19世紀のヨーロッパ。 女性は存在そのものが邪悪で愚かで罪深いとされた時代。 無知で家庭的で貞潔であれば男性によって幸せにしてもらうことができ、崇められさえする。 それに対して意志を持って行動したり願望を叶えるために生きようとする女性は悪者として厳しく断罪され罰せられるという構図が、原典の中に確かに潜んでいるのではないかと思えてくる。 それが松本さんの筆によってあられもなく浮き彫りにされたような感じ。 もちろんかなりシニカルに強調されてはいるのだけれど・・
あとがきで松本さんご自身語っておられるとおり、それでもグリムやアンデルセンには魅力がある。 語り継がれてきた大いなる存在感とか、ある種の郷愁のようなものだとか。 そして松本さんはグリムやアンデルセンを否定してはいない。 極端な方向性を持った書物があってもそれを排除するのではなく、多方向からの書物をさらに書いていけばいいのだというような姿勢だ。 格好いいと思う。
樋上公実子さんの挿絵が美しい! 確か樋上さんは、小川洋子さんの「おとぎ話の忘れ物」にも挿絵を描かれていたと思う。“ビターなメルヘン”というようなモチーフが樋上さんの絵にはよく似合う。


グリム、アンデルセンの罪深い姫の物語(文庫改題)
松本 侑子
角川書店 1999-05 (文庫)
松本侑子さんの作品いろいろ
★★★
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