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鶴屋南北の恋 / 領家高子
文化文政期に遅咲きの大輪を咲かせた当代髄一の歌舞伎狂言作者、四代目鶴屋南北(大南北)の最晩年。 「東海道四谷怪談」で大当たりをとった一年後(文政9年)からの四年に満たない長逝までの歳月は、最期の焔を撹拌させるように、恋の艶めきの中で激しく静かに流れてゆく・・
――― 深川黒船稲荷敷地内。 南北、最晩年のもうひとつの家もうひとつの暮らし。 江戸根生いの歌舞伎狂言作者には、隣家の離れに住まわせている女がいる。 戸板返しの終の栖。 鶴屋南北一世一代の浮世離れである ―――
大南北に相応しい成功裏の幕引きを案出する直江重兵衛。 自らが役者となり作者となり、身を切るように的確な配役を置き、趣向を凝らす。 大南北の嫡男の、一世一代の奇策であった。
時代の巨大な飢えに応え続ける宿命を負った芝居者が纏う非情さは、醜悪すれすれのところで懸命に形を保っている純心のよう。 人間の業を無残に描き込みながら、なぜここまで美しいか。 嘘と真を包みこんで、男と女の思念が生めき揺らぐ、爛れてなお清冽な魂の官能・・ それすらも命の遊びと嘯いてみせる。
些か達者に過ぎるくらいの科白回しも、南北狂言へのオマージュであるかのような物語世界にとても似つかわしく、また、混迷への兆しを孕んだ危うい時代、芝居国に過ぎる暗雲の最中、鶴屋南北という巨星を支える使命感に生きたかのような重兵衛を、“もう一人の鶴屋南北”として描こうとする領家さんの着眼が素晴らしかった。 影の役回りを引き受けた男への、手荒くも優しい追悼のようにさえ思えた。


鶴屋南北の恋
領家 高子
光文社 2009-07 (単行本)
関連作品いろいろ
★★★
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