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妖異博物館 / 柴田宵曲
なんという博覧強記。 それでいながら衒いを全く醸し出さない宵曲さんの恬淡とした文章に、また触れることができて嬉しい。
(ご本人曰くの)近世における“奇談類考”の書です。 文化文政期を境に、怪談は妖怪変化譚から幽霊譚へと様相を変え、どんどん叙情や因果をまとって陰に陰に物語化していくのですが、本書はさながら妖怪変化譚の折詰弁当。
というか、まだ怪談の域にまで達してないくらいの、粗削りで、大らかで、不条理で、素朴で、渺漠とした・・時にはそれゆえに、上質な怖気と妖しさを発散する民話、伝承領域の怪談(の原石)をためつすがめつするような興趣です。
轆轤首や舟幽霊、狐狸や河童や天狗、灯や石や珠・・と、88の小トピックに分類され大系化された構成をベースに、 「甲子夜話」「譚海」「耳嚢」「想山著聞集」「諸国里人談」(以下∞)・・と、江戸時代の随筆から怪奇・妖異の類いに属する話を蒐集し、陳列し、同工異曲を比較する横糸と、「捜神記」や「聊斎志異」といった中国志怪や「今昔物語」などの古典説話に遡上して先例を探る一方、鏡花や綺堂や八雲によって開花した近代怪談文芸の典拠を紐解く縦糸。 その見事な綾といったら。 縦横無尽とはまさにこのことだと思いました。
宮本輝さんの「春の夢」の、釘で貫かれた蜥蜴の鮮烈なイメージは、「西鶴諸国ばなし」が「醍醐随筆」から材を採り、さらに「煙霞綺談」に翻案された一連の型が下敷にあったのですね。 梨木香歩さんの「家守綺譚」で、高堂が掛け軸の中からボートを漕いで現れるシーンは八雲の果心居士を連想させますが、さらにその典拠は「夜窓鬼談」にあるらしいことなど、その辺りにわたしはビビっときたんですけど、なんかね。この一冊に無限の発見が隠れていそう。
色のあるコーティングをしないところに宵曲色が滲みます。 だから原典の質感に直接触れているような気分になってたんですが、質実的で簡潔で媚態のない筆致なのに、そこには独特の審美眼が横溢している不思議。 ラインナップそのもによって宵曲その人が迸っているとしか表現しようのないような。


妖異博物館
柴田 宵曲
筑摩書房 2005-08 (文庫)
関連作品いろいろ
★★★
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