※ ネタバレご注意を ※

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | - |
化蝶記 / 皆川博子
江戸と大正、ミステリと幻想風味を取り交ぜた8篇から成る、著者2冊目の時代物作品集。 腐敗寸前の極上美味にも似た・・愛と修羅が縺れ合う背徳の泥土。 その甘美な地獄に沈みゆく悲哀と恍惚。
皆川さんの一連の江戸モノは読み尽した気になっていたらば、こんなところに取って置きの一篇が! と口惜しかったのが表題作の「化蝶記」。 鶴屋南北とその息子の鶴十郎(のちの直江重兵衛)を軸に据え、若くして他界した四代目瀬川菊之丞の亡霊騒動と他殺説を絡めたミステリ仕立て。
晩年の南北父子を描いた領家高子さんの「鶴屋南北の恋」に心惹かれた読者へのご褒美みたい・・まるで。 遡ること十数年くらいでしょうか。 南北に眩しそうな視線を向ける鶴十郎がわたしには眩しい。 仕掛けを考案する二人の嬉々とした姿に胸が熱くなる。 この場面だけで幸せになれた一篇。
「幻の馬」と「がいはち」は、国芳門下崩れの旅絵師が探偵役を務めるミステリ風味の連作で、どちらも甲乙つけ難いんだけど、皆川作品は幻想系の方がわたしは好みかな。 「橋姫」「水の女」あたりは吸いつくようにフィット。 禁断や秘事への抗い難い誘惑。 踏み越えてしまった夜叉の凄艶な美しさ・・
漫才の原点、才蔵と太夫の生業を描く「日本橋夕景」に登場した小七は、“心の虚ろが人のかたちをとったような極悪人”で、どこか南北の悪を彷彿とさせるものを感じました。 ラストは鳥肌と溜息と涙で暫し放心状態。
ミステリからも幻想からも離れた潔さで掉尾を飾る「生き過ぎたりや」がまた出色の一作。 傾城屋の遊女歌舞伎が栄えた江戸初期。 戦国の血生臭さが濃密に残る時代に息巻いた無頼集団のあぶれ者たち。 八方破れに荒んだ昏く虚ろな狂熱が、刹那の恋の成就へ昇華する至高の耽美作品。
「月琴抄」と「橋姫」は、気だるく発酵する淀みの中に、さっと朱をはくように官能が迸る・・あの浮島。 大川の中州の話でした。 すっごく既視感があったんだけど、「ゆめこ縮緬」には未収録。 ここでも得した気分♪

<付記>
「月琴抄」は、後に「文月の使者」として練り直されたのですね。 「橋姫」はオリジナルの中州モノ? かどうかは未確認。 でもなー、既視感あるんだよなー。 気になってならないので 「ゆめこ縮緬」を読み直さなくては! てか何で買ってないんだ;; 久しぶりに皆川さん読んでテンション↑ この記事浮いてたら失礼・・orz


化蝶記
皆川 博子
読売新聞社 1992-10 (単行本)
皆川博子さんの作品いろいろ
★★★
| comments(0) | trackbacks(0) |
スポンサーサイト
| - | - |
C O M M E N T








トラックバック機能は終了しました。