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山羊の島の幽霊 / ピーター・ラフトス
[甲斐理恵子 訳] 自殺を試みようとするも死にきれず、妻に先立たれた失意を持て余す僕の前に、忽然と現れる謎の幽霊・フィンチ。 無気力につけ込まれて、幽霊の私怨を晴らすための復讐を請け負う契約を交わしてしまう僕。 最果ての山羊の島で出遭った2人の道行きは・・
幽霊に導かれ辿り着いたのは、海にそびえ立つ不気味な巨塔。 重苦しくたれこめる雲、どんよりと陰鬱な影をまとった要塞のような“大学”という異形の共同体。 その巨大迷路に身を投じ、次々と立ちはだかる理不尽なファクトに翻弄されながら、幽霊に忍従するのか、幽霊を支配するのか・・ 運命論と自由意志のせめぎ合いが、僕の内面で激しく沸騰していくのを感じます。
夢や希望を粉砕する官僚たちのお役所仕事、学問の重要性の度合いによって常に階級の入れ替え作業に身を晒す図書館員たちの暴動、机上の空論の中に煌めく真理や誤魔化しのにおい、概念から生命が抜け落ちた本の墓場、地底湖で破壊を司る怪物、変化を嫌う連鎖が招く自家中毒・・
奇妙奇天烈でありながら、まるで社会の縮図のような“大学”に呑まれ、もがき、やがて苛烈な生の痛みに塗れて、脆弱な悲しみが削ぎ落とされていくような、いわくいいがたいカタルシスが訪れるのです。  
ワクワクするような発想が、雨後の筍並みにニョキニョキと湧いて溢れて、“大学”という空間の縦横を埋め尽くしています。 いくらでも深読みできる余白を残しつつも、このぶっ飛んだ世界に弄ばれる感覚を味わえただけで読んだ甲斐がありました。
不条理でシビアな顛末ではあるんだけど、いい按配のウィットが軽快な波長を崩させない。 思考や行動の停滞を打ち破る生命の底力と組織の病根がぶつかり合ってスパークするような・・パワーを感じた物語。


山羊の島の幽霊
ピーター ラフトス
ランダムハウス講談社 2008-09 (単行本)
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