つづきの図書館 / 柏葉幸子
蔦の絡んだサイコロのような、石造りの二階建て。 どこか古めかしい“四方山市立図書館下町別館”は、新しい図書館に連れて行ってもらえなかった、置いてきぼりの本たちに囲まれているような、ちょっぴりさびしい図書館です。
40歳を過ぎて生まれ故郷に戻り、杏おばさんの看病の傍ら、司書見習いとして下町別館に勤め始めた桃さんが遭遇する不思議な体験。
ほんの束の間借りられていって、一緒に過ごした子供のことが忘れられずに、その子の“つづきが知りたい”と言って、絵本から飛び出してくる王様や狼、あまのじゃくや幽霊のために、桃さんは、早苗ちゃんや順一くんの消息を探るお手伝いをしてあげることになってしまいます。 なんて愉快な発想の転換でしょう!
章毎に小さな解決を迎えながら、ストーリー全体がラストへ向けて収斂されていく構成の妙。 ガジェットや伏線の操り方が滑らかで、むしろテクニックを先走りさせない洗練さ。 連作長編の鏡のような骨格の美しさを備えつつ、その内側に宿る物語の輝きもまた、強い。 母と子の愛情や、血の繋がりを越えた想いの周辺で傷つき、愁い、迷う、繊細な心模様を、朴訥とした茶目っ気でふんわりコーティングしたような温もりが堪らなくいい。
あまのじゃくが自転車の荷台に飛び乗った時、桃さんが抱いたあの想い・・ わたしの意識の表面を擽っていった何気ないシーンが、読み終えてからフラッシュバックのように蘇った時、この物語の大ファンになってしまいました。 いろんなものを呑み込んで、一生懸命生きてきた人が、優しさに包まれる幸せを、なんかもう、一体となって噛みしめさせてもらいました。
殆ど語られない桃さんと杏おばさんの胸裏や思い出が、現在進行形のいろんな一コマから透けて見え隠れするような・・ そして、あの一コマもこの一コマも、桃さんの心の奥にそっと働きかけ続けていたんだろうなって思えてくるのです。 ストーリーの深さに、うっかりしてやられた感アリアリの、心躍る読書タイムでした。
誰かを心配するということは、祈ることに近いような想いなのかもしれません。 今まで出会った本たちが愛しくて堪らなくなる素敵な余韻です。


つづきの図書館
柏葉 幸子
講談社 2010-01 (単行本)
関連作品いろいろ
★★★★
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