高慢と偏見 / ジェーン・オースティン
[富田彬 訳] 18世紀末から19世紀初頭頃。 イギリスの長閑な田舎町・ハーフォードシアを舞台に、当時の世相を反映した恋愛、結婚観のもとで繰り広げられる紳士淑女の人間ドラマ。 真摯で晴朗快活な瑞々しさと、アイロニカルな滑稽味が織り成す、日常風景という名の劇場がここに。
乙女の必読本です! と、思わず豪語したくなるほどに。 大いなる美質を備えた永遠の名品。 十代の頃に初めて読んだ時は、恋に恋しているお年頃だったので、キャーキャーのた打ち回るくらいハマった記憶があります。 それが二十代になって再読した時は、主人公のエリザベスの性格が鼻についてちょっとだけ色褪せてしまったトラウマが。 今にして思うと、エリザベスを現代人の価値観の中に押し込めて読んでいたんだろうね。 なので実は恐る恐る手に取ったんですが・・取り越し苦労でした。 色彩が眩しかったです。 そのことが嬉しかったです。
一貫して狂いのない人物描写が、物語を深く深く支えていることは疑いようもありません。 特に今回思ったのは、コリンズ氏の造形が出色であるということ。 ベネット氏の喰えなさもいい。 そして哀れなビングリー嬢に痛いシンパシーを感じてしまう自分がいる。 脇役の一人一人にまで、こんなにも深い人間観察が施されていたのかと、弱冠二十一歳の作者の才気に驚嘆します。
ゾンビ”が読みたいがために再読してみたんですが、ダンボールを引っかき回して探し出した甲斐がありました。 もう当分は仕舞い込みません。

<追記1>
岩波版は訳が不評なんですねぇ。 知らなかった・・orz 自分はコレしか知らないので、全然普通に満足が得られてしまうんですが;; イギリス古典の精緻な味わい(特に皮肉やウィットの機微)を活かすのには欠かせない直訳調の勿体臭い文体で、そしてややぞんざいで素朴なところが読んでいるうちにじわじわ味を増していくような肌触りなんですがねぇ。 読み易さに定評があるらしい新潮版には(レビューを読んだ限りでは)そんなに惹かれないんですが、古風な格調高さで絶賛されている河出版にはそそられるものがあるなぁ。

<追記2>
わ、わたし、典雅でベタなラブコメ小説という固定観念で読んでいました。 高慢とは偏見とは、どのような心の動きによって齎されるものなのか。 軽蔑も愛情も一つの偏見であり、その偏見を導き出す作業には、理性の振りをした感情や隠微な自負心が深く関わっている。 高慢も偏見も取り払われるものではなく、かたちを変えるもの・・ なるほど! そういう読み方ができるのか、この物語は! ふ、深い。。。
某密林レビュアーさんに気付かせてもらいました。 でもそれって作者は自覚的だったんだろうか? だとしたら、そんな素振りは毛ほども見せず、少女漫画の原点と形容したくなるような華やかな薫風を振り撒いて憚らない憎らしさが、いっそ好きだ。


高慢と偏見 上
ジェーン オースティン
岩波書店 1994-07 (文庫)
関連作品いろいろ
★★★★
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