琉璃玉の耳輪 / 津原泰水
[副題:尾崎翠 原案] 生前未発表であった尾崎翠の映画脚本原稿に大胆な改変を施し小説化した作品。 伝奇風味の娯楽小説というアクセントが、新しい息吹きとして注入されているのは想像に難くないのですが、あいにく原作、それどころか尾崎翠を未読なもので;; どの辺のエッセンスに感応したらいいのか・・ 気持ちを高鳴らせるまでに至れないもどかしさが募りました。
兎も角も。 並み居る昭和初期の探偵モノを凌駕する(というより別次元だよなぁ)魔都東京の圧巻の背徳美と、登場人物たちの仄暗い喜劇性が小説の奥行きをそこはかとなく深めていたのではないかと。 ただね。津原さんがエンタメ性重視で再生しているせいか、後半がちょっとヌルくなってしまうんだよなぁ。 なんというか、相容れないものを無理やり合体させてしまったような違和感が少しばかり。
舞台は昭和三年。 ベールの貴婦人の依頼を受けた閨秀探偵を狂言回しに展開される“瑠璃玉の耳輪”をした三姉妹の捕獲大作戦。 人智を超えた運命的必然が作用する舞台狂言の絵空事、泥臭くも華々しい一世一代の乱痴気レビュー。
そんな劇場張りの空間演出に拍手喝采を送りつつ、頽廃的な風俗が織り成す百花繚乱絵巻の底に蔓延る虚無感や抑圧や歪んだ懸命さが捉えようもなくざわざわと不気味。 境界を踏み越えるゾクっとするほどの身の軽さとでもいうのか、リスキーな行動原理が一段と時代の香りを濃厚にする。
社会が急速に複雑化することで齎される漠とした不安感や、新しい秩序を求めて激しくのたうっているが如き狂騒。 その最中に蠢々と咲き誇る徒花のような物語世界。 そこから零れる息遣いは毒々しくも蠱惑的で、途方もなく遣る瀬無い・・ ところにもってきて、終盤の健全なドラマチック志向に腰を折られてしまうような;;
失礼千万なんですが、どうしてもそんな印象を抱いてしまいました。 要はそこを差し引いても有り余る(これまた失礼な)魅力を湛えた作品だったと強調したいのですが言葉が追いつかず。


琉璃玉の耳輪
津原 泰水
河出書房新社 2010-09 (単行本)
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