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源内万華鏡 / 清水義範
清水さんは源内がお好きなんだなぁーと^^ その熱い想いが(ちょっと可愛らしいくらいに)伝わってきます。 講釈師のような軽妙な語りで紐解かれる源内の万華鏡人生。 作者の想像と史実を明確に書き分けない技法を採用した、エッセイと小説の中間くらいに位置する評伝作品なので、個人的にはやや混乱する部分もあったんですが、科学の胎動を感じさせる時代の申し子のような・・ 平賀源内その人の異彩溢れる息吹きをガッツリとキャッチさせていただきました。 源内入門書としてお手頃な良書です。
高松藩との間に生じた、男女の仲を想わせるほどに悩ましい軋轢が、源内の人生プランを大きく狂わせてしまったのかもしれないけれど、高松藩に縛られることによって、逆に全てのことから自由であれと強いられた皮肉な運命が、源内の生き様を形づくっている辺りからしてドラマ性に満ちている・・
人生半ばで諦めなくてはならなくなった地位も、山っ気を出して一攫千金の夢を見た金銀も、全ては心置きなく学問を行い、実社会に役立つように応用化する愉しみのため、更にはその成果によって齎される名声のための道具のように考えていたといっていいかも。 人をあっと言わせたくて仕方ない漢なのです。
杉田玄白×源内がよいです♪ 玄白は、源内の善き理解者だったんだろうなぁ。 せっかちな源内があっさり「コロイトボック」の邦訳を断念してしまうのに対して、しぶとく地道な努力を積み重ねて仲間と共に「ターヘル・アナトミア」の邦訳という偉業を達成する玄白。 この時とばかりに誇ってもよさそうなものなのに、源内から受けた精神的な恩恵に想いを馳せずにはいられないのだ。 源内から影響、感化を受けて遊戯的文学に目覚めたくせに、源内が残した俳諧人としての結果だけを忖度する大田南畝には、思わず玄白との度量の違いを感じて笑ってしまうんだけども、癪に障るから口外しなかっただけで、内心ではまた、違う思いがあったかもしれない。
源内は話が面白くて厭味がなく、茶目っ気があって可愛げがある半面、相当に気分屋だったり、自惚れ屋だったり、くわせ者だったりしたわけなので、関わった数多の知識人たちとの相性を探っていくと、さぞや面白かろうとニヤニヤしてしまったり。
アンテナが多く、動けば必ず何かに引っ掛かる道草人生。 やりたいことだらけで執着心が薄い分、一つのことにしくじっても何らへこたれない。 そこからアイデアを得て横道に逸れた何処かで、柔軟性、合理性豊かな天性の直観力でもってチャチャッと意外な布石を打ってしまったり・・
様々な分野を股にかけ、歩いた跡に振り撒かれた有形無形の種が発芽して、どれだけ多くの花を咲かせ、実を成らせたことかと。 人生そのものがどこか・・錬金術師めいてもいるし、それよりなにより本草学者の面目躍如ではないか。まるで。
でも、そういうことは時代を下らないと可視化されないわけで。 同時代人にとってはまさに“学問芸人”の粋たる存在以外の何ものでもなかったんだろうね。 その精神は言ってみれば一発屋。 源内の比類のなさの一端は、一発屋的瞬発力で何百発もの花火を打ち上げ続けたところにあったと思う。 したれば拭いきれない一発屋臭が付き纏うんだけど、そのケレン味やフェイクな感じといい、終生野に在り異端を極めた怪人っぷり(器用貧乏めいたチャーミングさも含めて)は、清々しいまでに格好いいではないか。
本人がどの程度まで自覚していたかは分からないけど、結果論として、“科学と産業の振興による国益”という時代を先取りした発想の持ち主だった源内。 彼が落した沢山の置き土産が、後世に開封され、熱い視線を投げかけられていることを知ったら、さぞかし鼻高々だろうなぁ。 そんな面影を想像しながら、源内を偲びたくなるのでした。


源内万華鏡
清水 義範
講談社 2001-10 (文庫)
清水義範さんの作品いろいろ

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