不思議を売る男 / ジェラルディン・マコーリアン
[金原瑞人 訳] ポーベイ夫人とエイルサは母と娘の二人暮らし。 或る日図書館で、エイルサが出会った風変わりな男は、そのままポーベイ夫人が営む冴えない古道具店に居着いてしまうことになり・・
MCCと名乗り、“本の国”から来たとうそぶく胡散臭い男によって語(騙)られる、古道具に纏わるまことしやかな由来や因縁話の数々。 店を訪れた一見客たちは、その話に耳を傾けるうちにあれよあれよと惹き込まれ、お目当ての家具や調度品の虜になってしまうのです。 その顛末を連作形式で綴りつつ、一つ屋根の下に暮らす3人の微妙な均衡もさり気なく織り込んでいく。
“物語の力”という付加価値によって、魔法を掛けられたように命を吹き込まれていく古ぼけた品々。 嘘か実かではなくて、夢を見させてほしい・・ そう願わずにはいられない人々の急所に付け入って、易々とペテンにかけて(?)しまう華麗なお手並み。
MCCは、店の売り物としてしこたま買い付けてきた古本から話のヒントを仕入れているらしいんですが、どうもそればかりでは片付けられない不思議が残る・・ この辺が最後に明かされる素性の秘密に関わる伏線にもなってるんですねぇ。 飛切り腕利きの語り部の、はたしてその正体は・・
一篇ごとの騙り(?)がめっぽう楽しかったー♪ 虚栄心や迷信深さや癇癪持ちに絡めた手痛い教訓話から、誇りや信頼や愛情といった美徳を描いた趣深い名品まで。 ヴィクトリア朝ロンドン、植民地時代のインド、アイルランドの田舎町、海賊船、古城、晩餐会・・と、舞台も華やかだし、ロマンス趣味、本格ミステリ趣味、怪奇趣味といった装いも上手い!
YAコーナーの本なのですが、けっこうな毒が効いております。 真相と最終局面の展開って;; あの仄暗〜いキモさ(そう読み取ってしまいました・・)は自分としては好きなんだが、少年少女に読ませていいのかー? と、ちょっとドギマギするよ^^; でもその分、子供騙し感がないです。 舐めてない。 単純に感動!みたいな話も全然なくて。 ゾッとするけど痛々しいとか、心が洗われるけど物悲しいとか、不気味だけど面白いとか・・
20世紀半ば頃のロンドンの地下鉄の不快指数の凄まじさとか、飽食に塗れた貴族たちの憐れな醜悪さとか、小悪魔に魅入られたような高慢な小娘の毒づきとか、大人も痺れさせる場面場面の描写が精彩に富んでいる点も特筆に値します。


不思議を売る男
ジェラルディン マコーリアン
偕成社 1998-06 (単行本)
関連作品いろいろ
★★★
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