なくしたものたちの国 / 角田光代
[挿画:松尾たいこ] 松尾さんのイラストに角田さんがストーリーを寄せて誕生した競作集。 お二人のコラボは「Presents」(大好きでした!)以来でしょうか。
雉田成子という一人の女性の一生を切れ切れに写し取った五つの短篇で構成される連作形式の物語。 気持ちの深〜いところをさらさらと、ズキズキと刺激してくるファンタジー風味が絶妙です。
何かをなくしたらそこに空洞が生じ、空洞はやがて何らかの代償で埋められる・・ 人が子供から大人になって、やがて老いていく人生のプロセスは、その繰り返しなのだと捉まえることができるかもしれません。 質量保存の法則(?)じゃないけど、ある時なくしてしまったものたちも、消滅するのではなくて、何処かに行き着いて存在している。 命だってきっとそう。 全ては大きな円環の中で繋がり合い響き合い、廻り廻っている・・ そんなイメージで人生観、死生観が描かれていました。 なんかね。(ちょっと強引なくらい)とってもポジティブな物語だったなぁ。
正当化するくらいの決意で、思い込みでも構わないから、意志の力でもって断固として自分を肯定して生きていかなくてはならない時もある。 幸せか不幸せかを決めるのは結局のところ主観なのだから、幸せを感じなきゃ損!
捻くれてて嫌になるなぁ・・orz (角田さん、松尾さん、ごめんなさい;;)見当違いも甚だしいけど、こんな受け止め方が今のわたしには精いっぱいでした。 この物語の3章目付近を彷徨いている(しかも成子のように大人にはなれない・・)人生道半ばの未熟者には、少しばかり眩しかったのです。
わたしは“なくしたものたちの国”へ行くのが怖いです。 忘れてしまったものたちへの愛惜と同じ数の、忘れることで得られた安寧のことを考えてしまうから。 思い出したいものと同じ数の、思い出したくないもののことが心を過ぎってしまうから。 “なくしたものたち”と向き合う扉を開いた時、成子のように切ない歓びと大いなる安らぎに包まれる自信がないのです。 だから死ぬのが怖い。
でも、何時か・・ 角田さんと松尾さんが紡いだこの健やかな境地を素直に感受できる自分になりたいものです。 固く封印して遠ざけたあれやこれやさえ、甘やかな痛みと共に愛おしく懐かしく思い返せるように年を取りたいなぁ。


なくしたものたちの国
角田 光代
ホーム社 2010-09 (単行本)
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