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ヨーロッパ物語紀行 / 松本侑子
著者が少女時代から愛読してきた物語を訪ね歩く文学紀行。 そのヨーロッパ(大陸)編です。 南は地中海沿岸から北は北海、バルト海沿岸まで。 イタリア、ベルギー、スペイン、ドイツの四ヶ国、八つの街の九つの物語で編まれていて、作品の梗概、作者の境遇、町の景観や風情と共に所縁の場所を紹介し、国や土地の歴史に照らして物語を紐解き、また、作家の内面がどのように反映されているのか考察するなど、興味深い一冊に仕上がっています。
ヨーロッパ諸国は地続きなだけに、日本人にはちょっと想像し難いくらい、国と国の権力争いに明け暮れた歴史があって、文学もその荒波に揉まれるようにして生み出されてきたのだなぁ〜と、厳粛な気持ちにさせられます。
松本さんはロマンチック好き&ヒューマンなスタンスをお持ちで、衒いのない率直な感想は(該博な知識がおありなのに)読者の目線に近い位置で発せられている気がして親しみの持てる良き案内人だと思いました。
何か一つでも物語に夢中になった経験があるなら、その舞台だったというだけで、何の変哲もない場所がかけがえのない“夢の王国”に変貌することを知っているものです。 だから、その場所に立った時の感激や、虚構と現実の接点を見出した時の高揚感、小さな発見から物語や作家への理解を深めていける喜び、その一つ一つを追体験するように楽しませてもらいました。
必ずしも作家がその国の人物ではなかったりもして、「カルメン」や「フランダースの犬」など、色眼鏡的な偏向によって、地元の人には(ちょっと蟠りの残る程度に)微妙なニュアンスで受け止められていたりするのも興味深く、一つの作品を多面的に眺めることの大切さを感じさせられました。
一番心惹かれたのは「ロミオとジュリエット」。 松本さんの誘いで古典音痴のわたしがシェイクスピアを読んでみたくて堪らなくなったからなぁ。 古くから伝わる民話(ギリシア神話にも確か似た話があったような)に、中世ヴェローナの皇帝派vs教皇派の政治権力争いをめぐる名家の対立(“モンテッキ家”と“カッペレッティ家”の対立は史実!)という(当時の)今めかしい素材を組み入れて作られたですねぇ。 それとおぼしき家まで残っているなんて・・ロマンです。
アン王女の道行きを辿った銀幕のローマ廻りも(ミーハーっぽくて)楽しかったな。 そして最後は本当の作者にまつわる秘められた真実にじーんとなって・・
あと、第一次大戦後からナチス台頭までの短かったワイマール共和国という古き良き時代の息吹きを自由闊達に描いたケストナーの児童文学が心に響きます。 ベルリンの華やかなりし都市文化の光と影・・ この時代、ちょうど日本は昭和初期なんですよね。 国の境遇が似ていて切なくなりました。
あ、余談になりますが。 煙草は聞いたことがあったけど、トマトまで大航海時代に中南米から持ち帰ったものだったとは。 オリーヴのように地中海地方の地生えなのかと思っていたら。 なんか・・今やちゃっかり地中海顔してるよね。トマトって^^;

備忘録がてら、ざっとメモ。 タイトル&舞台となった場所と時代。
「ロミオとジュリエット」/ ヴェローナ(中世)
「ローマの休日」/ ローマ(20世紀半ば)
「フランダースの犬」/ アントワープ(19世紀半ば)
「カルメン」/ セビーリャ(19世紀半ば)
「エル・シードの歌」/ バレンシア(中世)
「みずうみ」/ フーズム(19世紀半ば)
「エーミールと探偵たち」/ ベルリン(20世紀前半)
「点子ちゃんとアントン」/ ベルリン(20世紀前半)
「エーミールと三人のふたご」/ ヴァルデミュンデ(20世紀前半)



ヨーロッパ物語紀行
松本 侑子
幻冬舎 2005-11 (単行本)
松本侑子さんの作品いろいろ
★★
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