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笑わない数学者 / 森博嗣
相変わらず厭世的で低体温で、超越っぷり半端ない理系人間まみれで楽しいです。 犀川先生が建築学科なだけあって、本来、館チックなシリーズなのですが、中でも一段とその特質を生かした作品になっておりました。
天王寺家のクリスマス・パーティーに招かれ“三ツ星館”を訪れた犀川&萌絵。 天才建築家の手になる“三ツ星館”は、オリオン座を模した配置で設計されていて、長方形の敷地の四隅にミナレットが光り、中央には斜めにライトアップされた三つのドームが並ぶという意匠。 霧に閉ざされた聖夜に、館の主である伝説的数学者、天王寺博士が仕掛けたオリオン像消失のマジックとは? そして翌朝、再びオリオン像が現れた時、そこに死体が・・
いやーこれはねぇ。 早い段階でかなり正確に看破しました。 殺人事件はオリオン像消失のメカニズムを証明する根拠として機能しています。 社会通念へのアンチテーゼをシンボライズした禅問答のような哲学遊戯パートが、まんま伏線といっても過言ではなく・・ちょっと親切過ぎやしませんかねぇ。 でもラストが森さんらしく訳わからんくて素敵でした。 余韻が半端なくて。
時系列的には前作から半年・・でいいのかな? 犀川先生、鎧がレベルアップしてますね。 実はウブな本性がもう少し見え隠れしていたのに。 萌絵の挑発的な精神攻撃でタジタジになってた姿が可愛かったのに。 確実に学習していますね。
間違えることの、愚かしいことの愛おしさってあるだろうに。 恋を分析してしまうような犀川先生には、もしかして恋はできないのかなぁーと思うと哀しい・・大きなお世話だろうけど。 硝子のハートの持ち主過ぎて感情という分析不能な未知数のものに身を委ねることができないのではなかろうか。 理論武装で完璧にプロテクトして自分の弱さに怯える心を制圧し克服しようとしたところに顕在化するエレガントさ、スマートさ。 人格の何かがその・・致命的に壊れているというかね、極端なのだけれども、そこにキュンさせられるような放っておけなさがあって、萌絵は無意識裡にそれを感じ取っていたりするのかな。 憧れると同時に犀川先生の人間的な感情を呼び戻そうとでもしているかのような辺りがちょっと切ない。 そういう萌絵自身もまた、犀川先生への想い一色に心を染めることで、封印した傷に触れることから逃避して生きている。 そのことに犀川先生は気付いている・・そんな関係。
今回のお気に入り犀川語録を一つ。 “煙草には時間を少しだけ呼び戻す効果がある。喫煙者の寿命が短いという事実があるならば、それは多分、そのプレイバックの時間のためであろう”

<追記>
遅ればせながら“逆トリック”なる作者の意図を知りました。 すっかり目が眩んでおりました。 したり顔をしてニヤけておりました。 恥ずかしくて居たたまれません。 なるほど〜そうなのか〜。 “神のトリック”とは、“そっち”にも掛っていたわけなのですねぇ。 哲学問答の中にも綺羅星のごとく伏線があるではないか・・ メタミステリを超えてポストモダン的ニオイがする。 うぁぁーこれは魂胆が深い。 ノベルズ版の北村薫解説を読んでみたいです><。
そしてそして、ミステリ的にも舐めている場合ではなかった、余韻に浸っていてはいかんかったのだよ、浅はかな自分・・orz タイトルに隠された鍵にすら気付けなかったなんて・・泣けてくる。


笑わない数学者
森 博嗣
講談社 1999-07 (文庫)
関連作品いろいろ
★★★
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