※ ネタバレご注意を ※

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | - |
詩的私的ジャック / 森博嗣
シリーズ4作目。 正論と生きていくことは遠く無縁のものであり、純粋さや潔癖さは社会秩序と相容れない現実。 理数系の研究者たちはその狭間にいるのだなぁ〜という、そんなテーマ性を感じるシリーズのように思えてきました。 やっぱ本質的に「スカイ・クロラ」シリーズと似てるなーと。
あるロック歌手の熱狂的ファンが狙われるという猟奇的な女子大生連続殺人事件が起こり、やがてN大学工学部の実験棟もその舞台の一部となってしまいます。 密室ものです。 が、しかし、絶対に読者は見破れません! と断言したくなるガッチガチにマニアックな物理トリック(工学トリック?)の連打は、言ってみれば余興に過ぎず、(まぁ、犯人は誰か?というのはありますが)密室を作ったのは何故か? というアングルに焦点が絞られていく趣向です。 ある意味、前作の「笑わない数学者」同様に、ミステリのお約束を逆手に取った皮肉さも盛ってあるでしょう。
そういえば今回も“黄色いドアの部屋”でした。 これで4作全て疑惑の部屋のドアが黄色なのです。 このドアの色はいったい何の符丁? 凄く気になります。 意味なしジョークだったら怒りますよ。
思いもよらない表現で繰り出される感覚の違う言葉の数々。 その新鮮さに惹かれてついつい読み耽ってしまう森作品ですが、今回は内容柄でしょうか、形容や比喩の詩的表現に磨きがかかっていたし、会話のテンポなんかも軽快で筆運びがノッてる感じがしました。 “酸化すると言うよりは錆びると言った方がずいぶんロマンチックだろう?”なぁんて犀川先生も言っちゃってます。
「冷たい密室と博士たち」のようにプライベート場面が充実していて嬉しかった。 三色トーマが憩いです♪ 飼い主目線で脚色されたようなところがなくて、平凡な普通の犬であることが何故こんなにも可愛いんだろう。
萌絵に変化の兆しが見えます。 3年生になって課題が忙しくなり、進路に悩み、犀川先生との距離を自覚して愁いに沈み・・ 心を壊してしまうほどの哀しみを封印するために、感情を一瞬で遮断したり、意図的にアウトプットを抑制する術を身につけて生きてきた萌絵ですが、今思うと、それが犀川色に染ることとイコールに近かったのかもしれないね。 でもここへ来て、少しずつ綻びかけている。 完璧にプロテクトできていた“怖い”という感情が、意志に反して心の表層へと浮かび上がってくることに戸惑う萌絵。 特筆すべきは(本来の犀川好みではないはずなのに)犀川先生が、そんな萌絵の変化に対して決して否定的ではない点かなぁ。
ちょっと犀川先生ねぇ。ドSっぽいんですけどw 素知らぬ顔してるけどさ、何気に萌絵を育ててるでしょ。 一作一作、2人の関係が微妙に変化している気がするんだけど、今回はそこはかとなくSMチックなニオイを嗅ぎとりましたよワタシ。 S&Mってそっちかよ!(嘘) ある意味、ターニングポイントに差し掛かっている萌絵を、ここはしっかりサポートしなきゃと思ったのかもしれないね。 おそらくは想像以上にお互い特別で複雑な存在なのかも・・
この度のマイ犀川語録はこれで。 “研究ってね。何かに興味があるから出来るというものじゃないんだよ。研究そのものが面白いんだ。目的を見失うのが研究の心髄なんだ” ・・相変わらずイッちゃってますがw


詩的私的ジャック
森 博嗣
講談社 1999-11 (文庫)
関連作品いろいろ

| comments(0) | trackbacks(0) |
スポンサーサイト
| - | - |
C O M M E N T








トラックバック機能は終了しました。