※ ネタバレご注意を ※

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | - |
夏のレプリカ / 森博嗣
シリーズ7作目は、前作の「幻惑の死と使途」と同時進行で起こったもう一つの事件。 こちらは偶数章のみのパート。 小説内の時間進行が執筆速度に追いつかない状況だったであろう当時の速筆多産ぶりを思うとニヤリな妙策ですねぇ。
読者は事件単位で奇数章と偶数章の2冊に分離してもらえてますけど、時間軸の中にいる登場人物たちにとっては、“2つのパズルが混ざり合っている”状況なんですよね。 萌絵でさえ(!)こんがらがってやる気が出ないらしく、マジシャンの事件の方で手いっぱいとみえます。 犀川先生はマルチCPUなので無問題(笑)
よって今作は事件の当事者である簑沢杜萌が中心人物としてクローズアップされた格好です。 彼女は萌絵の高校時代の親友で、2人は第1章(前作)にて久々の再会を果たしています。 喫茶店でのエアチェス対局の場面は、こちらの結末への布石だったんですねー。
簑沢家を襲った奇怪な誘拐事件と、盲目の詩人であった杜萌の兄の失踪事件。 洋館、拳銃、仮面、血の繋がらない美しいお兄様・・と、ゴシックな湿り気といいましょうか、噎せるような香り高さと陽炎のような儚さと、そして内へ内へと向かうベクトルの息苦しさとが混じり合い、ダイナミックでセンセーショナルで超然とした前作の“裏で起こった”と形容するに相応しいもんやりとした陰鬱さがあって、これはちょっと異色作だなぁーという印象でした。
表裏となる2作の間にはもっと具象的な絡みが存在するのかと想像していたのですが、その辺はやはり森さん流儀の(?)意地悪な肩透かしで、深読みしなければテーマの関連性に気づかせてもらえない。 で、わたしはというと、その御褒美にはありつけなかった・・orz もやもやっとは来てるんだけど、端的に表現できない感じです。 更に、章の順序で読んでいない自分には、この2作を総括して語ることに躊躇いがあります。 思いがけない伏線や醍醐味を見落としてる自信があり過ぎて・・
犀川先生はもう完結してる感じがあるし、今、振り返っても5作目が明らかにターニングポイントだったんだよね。 それ以降は出番が限定的で、特に今回はすっかり名誉顧問的なポジションに退いてます。 それにも拘わらず、萌絵にとって犀川先生がどんなに大きな存在であるかをズシンと再認識せずにはいられなかった。 消化できずにいる恐れや怯えが発する警告、それらに対する意識、無意識の抵抗が、萌絵と杜萌とではまるで表裏のように思えて・・ そういう意味でも“描かないことによって描いている”部分が非常に多い作品であったように感じています。 この1作で萌絵はグンと大人になりましたね。 逆に言えば萌絵の経験値を上げるために避けて通れなかったであろうマストな1作・・かな。

<追記>
調べてみましたら、どうやら共通のテーマはズバリ“名前”であるようで・・単語が頻出していましたもんね。 うーん;;抽象的。 幻惑〜のテーマとしては大賛成なんですが、本作のテーマとしてはあまりピンと来なかったなぁ。 むしろ“仮面”の方がしっくりくる気がしたんだけど。


夏のレプリカ
森 博嗣
講談社 2000-11 (文庫)
関連作品いろいろ

| comments(0) | trackbacks(0) |
スポンサーサイト
| - | - |
C O M M E N T








トラックバック機能は終了しました。