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月は幽咽のデバイス / 森博嗣
傾斜地に建つ大規模な木造家屋、“薔薇屋敷”“月夜邸”“黒竹御殿”などの異称で呼ばれ、狼男の噂が囁かれる大邸宅で、白い大きな満月夜に起こる惨事。 令嬢の婚約パーティに招かれた一行が怪死事件に巻き込まれます。
こぼれた水の謎解きは面白かったんだけど、メインの密室トリックが想像の斜め上をいくというか・・これ、想像しちゃいけないお約束じゃないのか? はっきり言って、密室における禁じ手を使いやがった・・しれっと^^;
森さん流に言ったらこれも、無意味な固定観念に拘束されてた方がおバカさんってことになるのかな。 そういえば“約束を破る”とか“嘘つき”とかいった話材が、伏線と言えるんだか言えないんだか、微妙にサブリミナルされてたような気がしないではなかったけど、気のせい? それにしても「ミスリードが真相でした」なんて捻じくり返った挙句、超シンプルに行き着くような皮肉ミステリ、森さんだから怒られない。 そもそも、怒られないための予防線の張り方の妙味が森ミスの真髄であるとさえ。
密室事件にはこういう究極に野暮な解決篇も存在することの見本をお示しになったのか・・というのは表面的なロケーションで、北村薫さんが「笑わない数学者」の“逆トリック”を看破したように何か崇高な隠喩が仕掛けられているの図? うーん、自分にはわからない;;
でも一筋縄ではいかないのが森ミスクオリティだと思うので、やはり短絡的に読む気にはなれないのです。 “人はすべての現象に意図を見出したがる”と言ったと思いきや、すかさず同じ口で、“意志も意図も作為も賢いほど姿を見せない”と言ったりするからね。
前作「人形式モナリザ」は、完璧だった黒幕の鎧の僅かな綻び目から驚愕の真相が最後の最後に頭をもたげ、物語は一気に暗転して、おぼろげながら読者にその全容を想像させてくれたのですが、本作は黒幕の存在を臭わせるに留めていて、少なくとも、若干オープンエンド風に、読者に真相を委ねる手法が採られているのは確かと思う。 でも“面倒なこと、難しいことを避けたがる常人”のわたしは、これ以上、頭を悩ます気力がないです;; 
科学者を自称する紅子が、いったい何の研究をしてるんだかさっぱり明かしてもらえないでいるんですが、今回、“永久機関”という言葉にちょっと過敏に反応していた節が。 “マッドサイエンティスト”という呼称が使われたりするし、百年シリーズを先に読んでるので、あれ? って思ったんだけど、もしかして紅子は真賀田博士と何処かで繋がってくるのかな? ふと、ざわざわ得体の知れない予感を掻き立てられて、そっちの方にも興味の矛先が向き始めました。
S&Mシリーズと違って、本シリーズは(今のところ)はっきりした年代がわかるような記述がないんだけど、愛知県の“那古野市”という架空都市が存在する同フィールド上のストーリーなんだから、何処かで交わる構想があって全然おかしくないし、むしろそれを期待したいなー。 ただ両シリーズが同時代でないのは確か。 こちらはまだパソコンや携帯が全く存在してないんだよね。 太陽光発電が目新しい技術として描かれてたり。
このシリーズのダークホース的(?)存在、保呂草さん。 その訳アリのインパクトがだんだん薄くなるのは、構造上やむを得ないとしても、このまま尻つぼみになるとも思えないんだよなー。 今回、ラストの一言が気になるのは考え過ぎ? まだまだ叩けばホコリが出そうな^^;

<後日付記>
保呂草の“ラストの一言”は、わたしが想像していたのとは全く違った意味で、思いっきり意味深だったことがシリーズを読み進めるうちに判明。
この時の自分は確か、保呂草は実はトラウマ持ちで自殺でも考えてるのかな? くらいに思ってたからね・・orz 
ネタバレしちゃうと、「この物語は事件後すぐに記述されたのではなく、保呂草にとって遥か昔のモノローグだったんですよね。 つまり、これを書いている彼は、そろそろ老境なんですよ。 だからエピローグで“私”に戻った一瞬、自然とあんな言葉をもらしてしまった」のだと思われます。


月は幽咽のデバイス
森 博嗣
講談社 2003-03 (文庫)
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