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一千一秒物語 / 稲垣足穂
恩田陸さんの「一千一秒殺人事件」を読んだ時、どこか長野まゆみさんの「少年アリス」を連想した。 夜空と星々の“黒い紙に貼った銀紙”というような喩え方の符丁だったかもしれないし、漠然と雰囲気に近しいものを感じたのかもしれなかった。
その後、「一千一秒殺人事件」は、稲垣足穂の「一千一秒物語」へのオマージュであると知って、本家本元を読んでみたくなった。 稲垣足穂の作品に触れるのは初めてで、少しお勉強(wikiを読んだだけ)してみると、
独自の視点から、天体、飛行、宇宙、機械、少年愛、幻想などをテーマにした作品を発表した
とある。これはまさしく長野まゆみさんの世界では? と、ここで本末転倒ながら繋がったのだった。 長野まゆみさんは稲垣足穂の系譜上の作家さんと認識されているという何を今更的なことも初めて知りました。
記事タイトルを「一千一秒物語」にしてしまったけれど、実はわたしが読んだのは「ちくま日本文学全集 稲垣足穂」。 新潮文庫の「一千一秒物語」とは収録内容がかなり異なっている。
一番心惹かれたのは、初期に発表された「一千一秒物語」「鶏泥棒」「チョコレット」「星を売る店」など。大正時代にこんなに硬質でドライなメルヘンが日本人の筆で書かれたとは、俄かに信じがたいくらい。 悪戯なお月様や星々と、飄々とした“自分”とのひとコマショートショートで綴られる「一千一秒物語」は、中でもわたしの宝物的1篇になりそう。 情が介在しないのに、喧嘩(といっても物理的。蹴られたり、突き飛ばしたり・・)ばっかりしてるのに、お月様と“自分”の関係が妙に心地いい。 例えばこんな感じ。
<ある晩の出来事>
ある晩 月のかげ射すリンデンの並木道を口笛ふいて通っているとエイッ! ビュン! たいへんな力で投げ飛ばされた

<黒猫のしっぽを切った話>
ある晩 黒猫をつかまえて鋏でしっぽを切るとパチン! と黄いろい煙になってしまった あたまの上でキャ! という声がした 窓をあけると 尾のないホーキ星が逃げて行くのが見えた

<月とシガレット>
ある晩 ムーヴィから帰りに石を投げた
その石が 煙突の上で唄をうたっていたお月様に当った お月様の端がかけてしまった お月様は赤くなって怒った
「さあ! 元にかえせ!」
「どうもすみません」
「すまないよ」
「後生ですから」
「いや元にかえせ」
お月様は許しそうになかった けれどもとうとう巻タバコ一本でかんにんして貰った
颯爽としててニヒルでシュールでモダンで・・ カッコいいなぁ〜
処女作品集の発表に際して、芥川龍之介は、次のような厚意を寄せたという。
大きな三日月に腰掛けているイナガキ君、本の御礼を云いたくてもゼンマイ仕掛の蛾でもなけりゃ君の長椅子へは高くて行かれあしない
これまた粋だねぇ〜。 でもホント、三日月に跨って、地上の事など我かんせずといった風情で筆を走らせている足穂が目に浮かぶようだった。
「山ン本五郎左衛門只今退散仕る」も大好き。(実はコレが読みたかったので“ちくま”にしたのだった) 「稲生物怪録」を下地にしたという物語。 楽しい! 江戸時代の怪談話なのにちっともジメッと感がない。 どこかお月様と“自分”の飄々としたドタバタ劇に通ずるものがあるような。
評論は難解なのでコメントできない。 ただ同性愛というのが、どこか無機的というか・・受精に辿り着かない超人間的な精神性みたいなところが、地球(有機的)に対しての宇宙的なイメージとなんとなく結びつく感じがしたのだった。


ちくま日本文学全集 稲垣足穂
稲垣 足穂
筑摩書房 1991-09 (文庫)
関連作品いろいろ
★★★
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