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忘れられた花園 / ケイト・モートン
[青木純子 訳] オーストラリア人閨秀作家の手になるミステリ風ゴシック・ロマンス小説。 イギリスの古いお屋敷と、そこに埋もれた秘密に、謎めくお伽噺が絡む・・ 一気に読ませるリーダビリティに富んだ極上の物語小説。 頗る楽しい一時でした♪
第一次大戦前夜の1913年、ヨーロッパからの大型船で賑わうメアリーバラ埠頭に、たった1人で取り残されていた少女はネルと名付けられ、オーストラリア人夫婦の手で育てられました。 時は移り2005年、年老いたネルを看取った孫娘のカサンドラは、祖母から遺贈されたイギリスのコテージへと、祖母のルーツを探る旅に出ます。 かつて海を渡ったネルの唯一の所持品であった小さな白いトランクに仕舞われた一冊のお伽噺の本に導かれるように。
そのプロセスで、カサンドラは、自身が何者であるかを探し求めていた祖母の孤独を知り、およそ百年前に生きた先祖たちの残響を感受し、予期せぬ新しい出逢いを体験し・・ 過去を見つめる旅路は、いつしか未来への懸け橋になっていく。
粗筋としては定番の自分探しモノなんですが、本書の美点は、一つ一つのモチーフとその組み合わせの妙味というかなんというか・・ 宝石のような粒子がいっぱい詰まっていて、それらが時空を駆け巡りながら魔法を掛けられたように響き合い、やがて一つの“壮大なお伽噺”に練り上げられていくさまが美しい。
謎を追う2005年のカサンドラと、1975年のネル、そして謎の原風景となる20世紀初頭、広大な敷地と幾つもの庭園を有したコーンウォールの海辺のブラックハースト荘。 三つの時間軸が、三房の魔法の組み紐さながらに縒り合わされ、奇跡のような物語として読者の前に立ち現れます。
特に、20世紀初頭のロンドンとコーンウォールに魅了されました。 まるでイギリスの児童文学や童話の世界に転げ落ちたような景色が広がっていて、心躍らずにはいられない。 テムズの川沿いを塒にしていた貧民層の暮らし向き、霧に混じって街路に立ち込める臭いや音。 崖の上の壮麗なお屋敷に暮らす浮世離れした(まさにお伽噺から抜け出してきたような!)住人たち、茨の迷路、光と影が織り成す囲み庭園の豊饒な息吹き・・
本書は、子供時代に読書の悦びをもたらしてくれた児童文学作家たちへ捧げる頌歌であると、著者は明かしています。 真っ先に想起されるのはバーネットの「秘密の花園」ですが、グリム童話や「嵐が丘」や「ジェーン・エア」、ディケンズの空気まで香り、もう、ところ狭しとエッセンスが散りばめられている感じ。 訳者のアンテナに引っかかったという、バーバラ・ヴァインの「ステラの遺産」、フィリパ・ピアスの「トムは真夜中の庭で」など、また読みたい本が増えました。


忘れられた花園 上
ケイト モートン
東京創元社 2011-02 (単行本)
関連作品いろいろ
★★
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