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46番目の密室 / 有栖川有栖
国名シリーズだけ拾い読んでいましたが、“作家アリスシリーズ”全部読む気になって引き返して参りました。 結局こうなるわけね;; シリーズ一作目の長編です。
好きだなー。これ。 まだ推理作家として駆け出しだった有栖川さんの、所信表明にも似た息吹きが感じられて。 クールで洗練されたメタ的新味の中に、本格ミステリや密室トリックに対する熱い想いを(剥き出しに投げ込むのではなく)巧妙に溶かし込んでおられて、この頃から暑苦しさや野暮ったさは皆無。
日本のディクスン・カーの称号を持つ密室の巨匠は、目下、46番目の密室トリックを盛り込んだ長編を執筆中。 クリスマスに北軽井沢の巨匠の邸宅“星火荘”に招かれた、担当編集者や親しい作家たちを待ち受ける惨事。
パーティ、悪戯騒動、殺人事件と、徐々にディープな階層へ転び入る物語の構図には、クローズド・サークル、密室、暗号解読、犯罪論やミステリ談義、そして、クィーンの「最後の一撃」へのオマージュのようなミッシング・リンクなど、本格ミステリを彩る重要モチーフが具備されていて、盛り過ぎかというと全くそんな印象はない。
“地上の推理小説”と“天上の推理小説”という相反するアプローチを両輪に、密室トリックこそが本格ミステリの象徴であると位置付ける姿勢がくっきりと浮き彫りにされていて、それはもう、清々しいまでの読み心地でした。
メインの密室トリックは華麗じゃないし、全体的に哀愁さえ漂うくらい泥臭い理屈を採用し、生真面目に堅牢なプロットを遵守しきった“地上の推理小説”を敢えてお書きになった気概に惚れてしまうのである。 と同時に、トリックの限界を超えたいと希求するキラキラとした眼差し、見果てぬ夢を追い続ける推理作家としての覚悟や矜持といった秘めたる想いが限りなく響いている。
暗い夢がこの世の外へ向けて矢のような光を放つ・・ 密室の息の根を止める幾何学のファンタジーを、有栖川さんは何時か見せてくれるのかしら・・ アンチの向こうに広がる宇宙に連れて行ってくれるのかしら・・ そんなロマンに魅せられたなら、どうしてファンにならずにおれようか。
いきなり冒頭で、犯罪社会学者たる火村助教授の講義の場面が拝めて、おぉ! ってなったり、火村とアリスのファースト・コンタクトとなったエピソードが披露されていたり、英都大の学生である“僕”(有栖川有栖)が語り手になっている“学生アリスシリーズ”との奇妙な繋がりが明かされていたり、マニアック・ポイントも充実していましたし、ファンにはロンドン名所の一つだった(今はネット専門店になってしまったと小耳に挟みました・・)チャリング・クロス街(ロンドンの神田神保町)の推理小説専門書店“Murder One”の話題や、熱狂的な密室小説愛好家のロバート・エイディによる密室トリックコレクション「Lockd Loom Murders」の解説など、ミステリ・トリビアも興味津々でした。 余談ですが、バリー・ペロウンの短篇、「穴のあいた記憶」とやらが無性に読みたくなった。
適度なミスディレンションのおかげで、自分もアリス同様、真実の斜め周辺(笑)をうろうろさ迷ったわけですが、自分にはあんな暴走はできません^^; 完全に振り切られましたw 彼が終盤で開陳する道化っぷりにはニヤニヤ笑いが止まらんかった。 火村先生の探偵譚をネタにしているわけではなく、オリジナルの推理小説を創案し、発表しているアリスが名探偵にはなれないんですよねぇ^^; 紙の上ではいい線いくのにねぇ。 こんなパラドックス的な皮肉によって発電される茶目っ気さえ技巧的で抜かりがない・・


46番目の密室
有栖川 有栖
講談社 1995-03 (文庫)
関連作品いろいろ
★★
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