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東方綺譚 / マルグリット・ユルスナール
[多田智満子 訳] バルカン諸国、インド、中国、日本など西欧から見た“東方”の国々の伝承や寓話、神話を題材に、そこからインスパイアされて生まれた幻想譚9篇が収められている。
やっぱりギリシャ・トルコ近辺は、古からの交流や、キリスト教vs異教という根深すぎる確執の長い長い歴史に彩られた美と残酷が織り成す生々しい物語が多く、身近な東方なのだな・・というのが伝わってくる。 少し離れたインドの物語はヒンドゥ教の女神の神話が下地となり、どこか瞑想的、哲学的な雰囲気を纏う。 さらに離れた中国や日本となると、生々しさがなく静謐で幻想世界を漂うような印象。 “遠い異国”の香りがする。
日本の物語として描かれているのは、なんと源氏の君の最晩年。 「雲隠」の帖(題名のみで本文がなく、光源氏の死を暗示しているといわれる)のイメージ喚起に果敢にチャレンジするほどの造詣の深さには嬉しくなる。 滋味に富んでいるとはいえ、あくまでもユルスナールの目で見るオリエントの美しさとしての源氏物語の世界。 日本人が知ったか振って、重箱の隅を突付くのはナンセンスだ。
最初と最後の物語は奇しくも老画家が主人公。 片や現実を離れ、崇高な幻想美の世界へと昇華され、片や汚辱にまみれ、現実世界の醜悪さと共に老いさらばえていく。 前者は優れた画家、後者は劣った画家として登場するのだが、単なる優劣の対比では済まない奥深い何かを感じずにはいられない。 その“何か”の手がかりが9編の物語の中に散りばめられているようにさえ思えてきて、なんだかとりとめもなく存在の根底を揺すぶるような思索の中へ落ちていきそうになる。


東方綺譚
マルグリット ユルスナール
白水社 1984-12 (新書)
関連作品いろいろ
★★★
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