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サム・ホーソーンの事件簿1 / エドワード・D・ホック
[木村二郎 訳] 聞き手に御神酒を勧めながら、老医師サム・ホーソーンが、若き日の推理譚を披露していく昔語りスタイルの連作ミステリ短篇集。
ニューイングランドの田舎町、ノースモント(架空の町です)に診療所を構えた青年医師のサム・ホーソーン。 町で起こる不可解な殺人事件を次々と鮮やかに解決していくうちに、レンズ保安官からも一目置かれる存在になり、何時しか不可能犯罪の専門家(!)たる称号が。 シリーズ1巻目は、赴任直後の1922年3月から1927年9月までに起こった12の事件が収められています。
衆人環視の密室や人間消失など“不可能犯罪”のフルコースなだけあり、大胆奇抜な謎の提示に目を奪われますが、適度に離れわざを駆使しながらも、全体に手堅く、キレよく、大味な印象を全く受けません。 導入部の掴みと読後の満足度が釣り合った質の高いパフォーマンスを積み重ねる安定感が凄い。
有蓋橋、水車小屋、ロブスター小屋、野外音楽堂、乗務員車、十六号独房、古い田舎宿、農産物祭り・・と、タイトルを眺めるだけでも田舎風の魅惑的な舞台が並び立ち、わくわくしてしまうんですが、小さな共同体の閉鎖的で牧歌的な暮らし向きや時代風俗がそれとなく作品に味わいを添えているのが素敵。 ジプシーや奇術師やトーキー映画や・・ ちょうど禁酒法時代なのですが、密造酒が思いのほか庶民の日常に溶け込んでいるんだなーとかね。
アメリカにはニューイングランド文学の系譜がありますが、ミステリー界が生んだ本シリーズも、その枝葉の一部に加えたいですね。 “ホーソーン”というラスト・ネームにも、ニューイングランド文学史に燦然と輝くナサニエル・ホーソーンへの敬意が込められているようです。
サム先生の愛車は、両親が卒業祝いにプレゼントしてくれた黄色いピアース・アロー・ランアバウト。 景観に馴染まないその目立ちっぷりを最初は敬遠されてしまうんですが、余所者だった新米医師が“サム先生”として受け入れられていくと同時に、愛車もサム先生のシンボルのように愛されていく様子など、一篇ごと時系列に並んでいるので背景の物語性が緩やかに垣間見れたりします。 そう、あくまで垣間見れる程度に抑制されていて、謎の構築に神経をそそぐ職人気質っぽさが好き。
本書は、1996年刊行の本国版にノン・シリーズ「長い墜落」を併録した日本オリジナル版なのですが、本国版のハードカバー限定版だけの特典、ホック自身による“サム・ホーソーン医師略歴”まで添付されています。 これは正直、有難いのか迷惑なのか;; 背景のストーリー展開も楽しみたい派には不興なんじゃないかと思う・・orz もっとも、第1巻の時点では先々の刊行が約束されていたわけではなかったようで、その辺の事情あってのことかもしれませんね。 結局、1974年の第1作から亡くなられる2008年までに書き継がれた全72作が全6巻にまとめられたことは本当に喜ばしい。 物語世界は、1922年から1944年まで、アメリカ北東部の小さな町の古き良き時代の22年間を追っていくようです。 読む気満々です。 楽しみー♪


サム・ホーソーンの事件簿1
エドワード・D・ホック
東京創元社 2000-05 (文庫)
関連作品いろいろ
★★★
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