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百物語 / 杉浦日向子
年寄りの侘住は退屈でならないから・・と、百本の伽羅の線香を百物語の勘定に見立て、訪れる客人に一話ずつ奇妙な話を所望する閑居暮らしの御隠居。 客人から御隠居への口頭伝承という体裁をとって巷説の趣きを引き立たせた九十九話の江戸怪異譚。
“不思議なる物語の百話集う処、必ずばけもの現われ出ずると・・”という趣向で、百物語の恐怖は佳局を迎える手筈なんですが、日向子さんの百物語ときたら、そんな気配を全く発していなかったというのが個人的な感想です。 九十九話を読み終えた時は逆にパンドラの箱のようで。 怖いものは出尽くし、ほっこりと優しく、慈しみ深い温もりが最後に残された・・そんな印象で締めくくられていたんです。
おそらくオリジナルではないのでしょう。 江戸の随筆に取材した再話集じゃないかと思います。 丹念な渉猟と真摯な凝視の跡が窺え、時代相を完璧なまでに再現しつつ構築した民話的世界は悠揚と広がり、そこに、絵でなくては伝えられない滋味もしっかり描き込んでいる。
いわゆる鳴り物入りのヒュードロの怖さじゃなく、中にはゾクっとくる話もありますが、因果律も及ばぬような取るに足りない瑣末な一風景にすぎません。 市井の暮らしに溶け込んで、ふとした隙間にぽっかと浮かぶ普段使い(?)の怪異です。 叱ったり、なだめたり、あやしたり、あれらはそういうもんだよ・・といった寛容の中に居場所を分け与えられているとでも言ったらいいのか、ちょっと手の焼けるご近所さんのような扱いなんですよねぇ。 解決できない実現象を消化するツールとして、怪異は人々の精神衛生に深く寄与してしたんだな・・ そんな想いが心の古層に響いて取りとめのない懐かしさをさざ波立たせる。
人情話に落ちるかな? と極め込んでいると呆気なく裏切られ、薄情にも(笑)さらっと終わってしまう心地よさ。 泣けるような話でもないのに、素っ気なさと可笑しみに紛れた不思議な切なさにやられて、十話くらい涙ちびっちゃいました^^; 飾り気もなく飄々としているようで、どこか放っておけない繊細さが滲んでいるんだなー。 好きな話がいっぱいで書ききれないんですが、「狢と棲む話」がマイベストかな。
「猫と婆様の話」は、森銑三さんの「新編 物いう小箱」にも採られていて大好きなんです! 絵で賞翫できる悦びに浸りました。 別の時空に囚われ彷徨う「旅の夢の話」や、時空が交錯する微かな甘酸っぱさの匙加減が絶妙な「竹林の再会の話」のように短いながら馥郁と物語のエッセンスを香り立たせていた話も佳いし、人が堕落する寓話のような「地獄に呑まれた話」などは、芥川が小説にしていてもおかしくないような茫とした輝きを放っていて印象深いです。
何故かしら「鰻の怪の話」の、人間に化けた鰻の小さな笑顔の一コマが忘れなれなくて・・クソッ、こんなところで><


百物語
杉浦 日向子
新潮社 1995-11 (文庫)
関連作品いろいろ
★★★
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