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恐怖 / 筒井康隆
地方都市の閑静な準高級住宅地で、閨秀画家、建築評論家と、相次いで文化人が狙われる殺人事件が発生。 最初の事件の第一発見者となった村田勘市は、離婚して3年、独身生活を送るそこそこに名の売れた作家。 見えない殺人者に怯え、次は我が身・・と恐怖を増幅させていく一作家と、その周辺の文化人たちの狼狽えぶりをフィーチャーし、諷刺的に描かいた狂想曲のような作品です。 事件の背景も含めて“文化人”なる生態の厭世的なひ弱さが突きつけられていますが、少しばかり哀愁の色も滲み、いい感じの滑稽劇になっています。
そもそも恐怖とは何か? なんて考えてる場合じゃないのに、恐怖を払拭するためにその根源を喝破しなければという妄念に駆られて、哲学や生理学で蘊蓄を捏ね繰り回してみたり、恐怖を分類整理してその場かぎりの満悦感を得てみたところで、解剖された恐怖は、リアルな本質からどんどん乖離していくばかりでなんの解決にもならないし、はたまた、事件の真相を求めてミステリのアイデアにのめり込み、執着し、熱中することで、気持ちを紛らわせようにも、思考のお化けを生み出すばかりで、ますます神経症的暴走を加速させてしまうという^^; 作家という人種の悲哀が戯画化されていて非常に面白い。
本編を真っすぐミステリとして読むと、あっと驚くことはなにもないのですが、“しかし現実はいたって普通なのだ”という皮肉オチが盛ってあったかな? どうだろう。 ※クリスティーの「そして誰もいなくなった」ネタバレ注意。


恐怖
筒井 康隆
文藝春秋 2004-02 (文庫)
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