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牡丹灯籠 / アンソロジー
[副題:ホラーセレクション1][赤木かん子 編] 随筆に芝居に落語に・・日本の近世怪談文芸史に華々しい足跡を残した「牡丹灯籠」ですが、その系譜を整理するのに佳き本です。 江戸の怪談話は好きなんですが、ちょっと遠ざかっていると「牡丹灯籠」も「四谷怪談」も「真景累ヶ淵」も記憶の中で混ざり合ってごっちゃになっちゃうんだよね;; ここで一回ちゃんと分離できたのは物怪の幸い。 ついでに「番町皿屋敷」もラインナップしてくれたらよかったのに。
「牡丹灯籠」がメジャーになったのは円朝の功績によりますが、円朝の「怪談 牡丹燈籠」(の一部)は、そもそも浅井了意の仮名草子「伽婢子」所収の「牡丹灯籠」を下敷きにしたもので、さらにそのルーツは中国明代の怪異小説集「剪燈新話」所収の「牡丹燈記」に遡ります。
原典の「牡丹燈記」はなかなかに凄味のある話なんですが、了意版は、ドギツイ部分をバッサリ削りつつ、微かに中華風味の幽玄さを残して、男の寂しさが沁みる甘美な怪異譚に仕立て直したんだなーと感服します。 円朝まで来ると、もう完全にジャパネスクですね。
了意と円朝の間にも、山東京伝が翻案して「浮牡丹全伝」という読本を書いていて、そのモチーフを南北が「阿国御前化粧鏡」の狂言で使い、その芝居を再び京伝が「戯傷花牡丹燈籠」という合巻に仕立てたとか・・ 「牡丹灯籠」は、円朝以前にも着実に引き継がれていたことがわかるし、江戸でも案外と馴染んでいたんだろうか。 それにしても・・ 今回、改めて読んだけど、南北の「四谷怪談」のド悪っぷりスゲー! 子供向けでこれかw
今日、例のカラ〜ンコロ〜ンの“幽霊譚”として流布しているのは「怪談 牡丹灯籠」の一部分なのであって、全編を読むと、むしろ円朝が“アンチ幽霊譚”を描こうとしていたことが仄見えるらしい。 「真景累ヶ淵」の“真景”も“神経”に掛かっていて累ヶ淵のサイコバージョンほどの意味合いが込められているようです。 生れは江戸でも、円朝はやっぱり文明開化を肌で感じた明治人なんだなーと思う。 同時代の黙阿弥もまた、狂言「木間星箱根鹿笛」で、神経から幽霊を解明する試みをしているそうである。
綺堂が寄席で聴いたという円朝の“柔らかな、しんみりした”話し口は今となっては窺い知ることもできないのだけれど、速記本の中にそのよすがを求めて忸怩をもてあそぶのも、また一興かもしれないと自分を慰めてみる。 “円朝は円朝の出づべき時に出たのであって、円朝の出づべからざる時に円朝は出ない”という綺堂の言葉が深い。
江戸から明治期の文化の変遷を知らず知らず感じ取れてトテモ甲斐のある読書タイムでした。 “トテモ”って、昭和31年当時、今どきの流行詞だったんだって^^

収録作品
牡丹の灯籠 / 浅井了意 (藤堂憶斗 訳)
牡丹灯籠 −お札はがし− / 五代目 古今亭志ん生
随筆(高座の牡丹燈籠・舞台の牡丹燈籠・怪談劇) / 岡本綺堂
怪談 牡丹燈記 / 中国の民話 (鈴木了三 訳)
四谷怪談 / さねとうあきら (鶴屋南北 原作)
随筆(真景累ヶ淵 解説) / 久保田万太郎


牡丹灯籠
アンソロジー
ポプラ社 2006-03 (単行本)
ホラーセレクションいろいろ
★★
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