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チャリング・クロス街84番地 / ヘレーン・ハンフ
[副題:書物を愛する人のための本][江藤淳 訳] “イギリスの神保町”とも呼ばれるロンドンのチャリング・クロス街にある一軒の古書専門店マークス社に宛てて、ニューヨークに暮らす劇作家の女性(著者)が送った一通の注文書をきっかけに、1949年から1969年の二十年に渡って交わされた手紙のやり取りを編集した往復書簡集。 本好きなら、きっと誰もが憧れずにはいられないような、軽い嫉妬を覚えるほどの素敵な交流の記録です。
米ドルの力が示すアメリカの繁栄と、戦後の痛ましい窮乏から徐々に立ち直るイギリス。 第二次大戦後二十年の両国の背景が透かし絵のように刻まれているのも、奥行きを感じさせる一因なのでしょう。
古き良きイギリスとその文学に惹かれる利発なアメリカ人女性と、彼女の要望と快活な語り掛けに対して折り目正しい誠実さに控えめなウィットを忍ばせて応えるイギリス紳士・・という構図なんですが、著者ヘレーンと担当者のフランク・ドエル氏、両者の呼吸が紡ぎ出す空間の居心地のよさといったら、本好きなら・・ふぅ。 以下略。
どうだろう・・ ヘレーンの心を覗くことはできないけれど、長の年月、夢に見ていたイギリスへの訪問を、結局ずっと躊躇っていたようにも窺えて。 チャリング・クロス街84番地の古書店を通して、ずっと彼女の傍に寄り添っていた文学の中のイギリス、心のイギリスを壊したくなかったのかな・・ 生前、お二人が一度も会わず仕舞いだったことが、いつまでも鼻の奥をジーンとさせるのです。 そこに“文通”の持つ淡く甘やかな美風を重ね合わせ、名状し難い余韻とともに本を閉じました。
イギリスの食料が配給制だった時期、ヘレーンは盛んに卵やハムの小包をマークス社に送るんですが、フランクが出張中だったりすると、“フランクのハンフさん”に、勝手に手紙を書いていいものかと、同僚たちがおずおずと気を揉みつつ、でも居ても立っても居られずとばかり、各々こっそり(?)御礼状をしたためていたり、イギリスを訪れたヘレーンの友人夫婦が、マークス社に立ち寄ってみたら、“ハンフさんのお友達”を歓迎するためにぞろぞろと店員さんたち挙って出て来ちゃったり・・ 微笑ましくて温かくて心擽るエピソードの数々♪
17世紀から19世紀ごろの英国古典文学が手紙の中で綺羅星の如く踊っています。 わたしは全くついていけないんですけど、著者が愛する、その馥郁とした息吹は胸いっぱいに吸い込むことができました。 歳月が育んだ古書のゆかしい美しさと一緒に。


チャリング・クロス街84番地
−書物を愛する人のための本−

ヘレーン ハンフ
中央公論社 1984-10 (文庫)
関連作品いろいろ
★★
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