恋のうき世 / 永井路子
[副題:新今昔物語] 今昔物語の中の説話にアイディアを得て永井さん流に膨らませて味付けした短篇集。 時代は平安から室町あたり。 煌びやかな宮廷の話ではなくて、夜盗や浮浪者や下っ端の舎人や検非違使などが主役の庶民の物語。 王朝ものが発する“なよなよめそめそ”とは好対照のタフで明るい話ばかりなのだけど、羅生門に象徴されるような、食うか食われるか、汲々とした庶民の暮らしの気配が感じられる。 それなのに、とにかく元気。 特に女性^^ お色気を武器に男を翻弄し、したたかに世を渡る姿は小気味よく、いっそ清々しい。 この物語中の男性群は、だいたい罠に落ちてしまうのだけれど、全然シリアスではなくて、馬鹿めが・・と苦笑したくなるようなお話なのだ。
淫祀邪教の儲けの手口とか、白拍子の裏の舞いとか、傀儡一座の暮らしぶりとか、殿上人と盗賊や浮浪者の陰の繋がりとか、天女や鬼や神隠しって、実はこうなことだったのかも・・などなど、読めば読むほど興味が尽きない。 現実から目を背けさせるために意図的に流された噂が、実しやかに語り継がれてきた例がいくらでも“史実”の中に潜んでいたりするんじゃないかと、好奇心を擽られるようなワクワク楽しい読書タイムだった。


恋のうき世 −新今昔物語−
永井 路子
文藝春秋 1992-01 (文庫)
永井路子さんの本
★★★★
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