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奇譚を売る店 / 芦辺拓
“――また買ってしまった”で始まる六篇の古書幻想譚・・とは言ってもミステリでもあり、ちゃんと仕掛けが用意されていました。 芦辺さんがミステリ書きだということを忘れていたわけではないんだけど、一篇一篇が面白く、何も勘ぐらずに真っ直ぐ読んでしまい、あっけらかんと驚かせてもらいました。 予備知識なしの読書を強くお勧め。(ってこれが既に予備知識なんだげど;;)
うらぶれた街の片隅の古本屋に通い、撓んだ書棚に並ぶ色褪せた本や冊子をためつすがめつ、一期一会の掘り出し物を探さずにはいられない小説家の“私”。
“私”の運命は手に入れた一冊の古本によって狂わされていきます。 時を重ねた書物の業が“私”を絡め取り、自らの物語空間にゆらりゆらりと曳き込んでいく悪夢的な展開が美味。 幻惑の彼方に誘われ、帰って来れないような危ういことになるんだけど、次の章では何事もなかったかのようにリセットされて、“――また買ってしまった”に舞い戻る、この不合理なループが読んでるうちに段々癖になってくるんです。 寸止めで踏み留まったり、破滅の刹那に悟りを得るパターンよりも逝っちゃってるのが好きだわ^^; でもストーリー的には「こちらX探偵局 怪人幽鬼博士の巻」が一番気に入ってたりする。 キュンと来る成分がいい♪
一篇目に、“私”の親戚として“蘆邉”姓の人物が登場するので、“私”と作者を近似値として印象づける狙いがあったかも。 でも、作者と物語の間には適度な距離が置かれていて、“私”の書痴たる性や妄想癖を、ちょっと突き放した目線で描いているところに冷めたユーモアが滲んでいます。
・・と思って読んでました。 五篇目まで。 うわぁー 油断した。 メタ・マジックにすっかり翻弄させていただきたした。 最終篇の「奇譚を売る店」は、表題作という単純なニュアンスではない、とだけ。 そして今更ながら、“はじめに”が非常に意味深だったことを知り、この独特なフォントが本書に採用された理由に思い至る。 読み終わって全体を眺めると底無しの虚しさが茫々と立ち込めている感じ。 それが全然悪くなかった。 古書愛の魔性的愉楽の、禁断の裏側を見せられたようで。
戦前戦後のサブカルやカルトな活字文化の薀蓄あれこれ、レトロ趣味てんこ盛りな芦辺さんらしい濃さがやっぱいいなー。 特に前半の、巨大な西洋建築を誇る異形の脳病院、人目を憚るいかがわしさを売りにしたカストリ雑誌の三文作家、良いものも一緒くたに打ち捨てられて忘れ去られた少年向け漫画雑誌など、往年の怪奇趣味や探偵趣味のエキスを存分に吸い上げて、超マイナー&ディープな匂いを発散させていた辺りが惜しみなくツボりどころでした。 全篇に渡って計算づくのネタをどれだけ仕込んでいるのか、種明かし本があったら読んでみたい。 イニシャルの人たちは誰なんだろう・・というのもそっと気になっている。


奇譚を売る店
芦辺 拓
光文社 2013-07 (単行本)
関連作品いろいろ
★★★
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