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翼ある闇 / 麻耶雄嵩
[副題:メルカトル鮎最後の事件] ひょっとして、アンチミステリの一つの到達点と言っても言い過ぎではないんじゃ。 アンチ的なるミステリ(というかミステリ自体)をさほど読んでもいない身でおこがましいのですが、今まで読んだ中では屈指の衝撃度だった。 飽和状態というのか、自家中毒というのか、そのギリギリのラインで狂い咲く絢爛たる異形の怪物みたいな作品。
中世の遺物のような陰鬱な古城、連続斬首事件、鼻持ちならない名探偵・・と、それはもう臆面もない(いっそ嫌味なくらい)お約束コードを踏襲し、火薬たっぷり、ゴシック全開であられもない舞台美術の虚構世界を疾走します。
推理小説的には、ミッシングリンクものにして、犯人と探偵のダブルフーダニットもの・・いやもう、あの手この手注ぎ込みまくりのフルコース。 ただ、推理小説作法を逆手にとったメタ的啓示がメインストリームとして確かに存在し、不気味な光芒を放っているのです。 名探偵を神の座から地上へ引き摺り下ろし、本当の神(事件の第一動者ないし鳥瞰者)は誰? と囁き続けている。 いけしゃあしゃあと反則技(しかも本家より悪質)を用いた“ブルータス”の独白を以っての閉幕は、推理小説における推理そのものを否定してしまう禁断の神を招じ入れたも同然なのだから、問題作と言われるのが頷けます。(あぁ、それもなんたるサイコパス!) でも、膨張し過ぎて推理小説のバリアをぶち壊してしまったような単純な勢いでは言い尽くせない、そこに至る方法上の切迫さを感じさせる密度がいい。 形式化を極限まで突き詰めた時、内部から自壊せざるをえなくなったジレンマの発露が。
それでも、この作品の中で一番輝いているのは、滝に打たれた探偵が開陳した奇想天外なバカ推理なんだよね。 そこに探偵小説への愛が炙り出されいたように感じられて痺れたのです。 見当違いかもしれないけど。
レプリカめいた重厚さに、時より顔を覗かせるリリカルな青さがマッチし、しかも最終的には正統なゴシックロマン小説だったという・・ 危うさと堅実さ、高踏さと大衆さの混淆するグロテスクな交響曲を聴いたような充足感。
これ、麻耶さんのデビュー作ですよね? いきなり最後の事件ってちょっと笑えるんですが、メルカトル探偵ものがこの先もシリーズ化されてるってどういうことなのか気になり過ぎる・・ 「死んじゃったのに」。


翼ある闇 −メルカトル鮎最後の事件−
麻耶 雄嵩
講談社 1996-07 (文庫)
関連作品いろいろ
★★★


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