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なんらかの事情 / 岸本佐知子
文藝雑誌“ちくま”の連載をまとめた第二弾。 「ねにもつタイプ」の続編です。 エッセイ集・・というよりエッセイ風掌篇集の趣きは健在で、前回の炸裂感は影を潜めたものの、奇妙な味? ナノ文学? そっち系のハイセンスな才能が、匠の域に迫っていたのではないかとお見受けします。
途中までは、一生ついていきます!お師匠様! って気分でお供をするんだけど、さようなら〜と後ろ姿を見送る分岐点が・・ ふふ、やみつき。 特に後半は常人の到達し得ないアナザーワールドへ旅立たれておられました。
でも、ヤバいというよりは、作者のヤバがらせる芸を愉しんでいるに近いような意識、あるいは、変人度の高い人の粋狂的遍歴、なんでもないことに面白どころを見つけてツッコミを入れる比類なき感性とそこから広がりゆく妄想力・・といったような無駄な思考の贅沢さを賞翫しつつ読んでいると、ふっと足元を掬われてドキっとする瞬間がある。 社会の裂け目から顔を覗かせる不明瞭な日常感覚の中に潜む何かを、真実の一片の影として的確に掬い上げているからなんだろうか。
主観に落ち込んだトリビアルな物事の、極めてフェティッシュな視点の考察でありながら、秘密の扉を開いてくれたような共感を抱かずにはいられないし、心に応える奇妙な衝撃がある。 嗜好品のようにクセになる味わいです。
間が持たない気がしてついつい入れてしまった飾りについてや、五十音界の勢力図や、古いカーナビの感情分析や、それだけを凝視しているとありふれた物や言葉や身体の部位が珍奇に見えてくる不思議や、もはやショートショート作品として完成されてる「ハッピー・ニュー・イヤー」「遺言状」「選ばれし者」などなど、どの話が好きってしぼれないくらいみんなよかったけど、むしろ掌篇同士の相乗効果というのか、馴染みのある日常がグラっと傾ぐ酩酊感がそこはかとなく、(クラフト・エヴィング商會さんの挿絵も含めて)全体の醸し出す品質の調和が素晴らしい。


なんらかの事情
岸本 佐知子
筑摩書房 2012-11 (単行本)
関連作品いろいろ
★★
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