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聖なる酔っぱらいの伝説 / ヨーゼフ・ロート
[池内紀 訳] オーストリア=ハンガリー帝国の辺境に生まれ、第二次大戦目前のパリで客死した、放浪のユダヤ人といわれるドイツ語作家の短篇集。 表題作の他、「四月、ある愛の物語」と「皇帝の胸像」の二篇が収められています。
「聖なる酔っぱらいの伝説」は、セーヌ川の橋の下に暮らす一文無しの呑んだくれが、行き当たりばったりの奇蹟に身を委ね、ふらりふらりと心地よく生きて、最後に(本人にとっての)幸せな死を迎える・・要約すると、こんな話が成立していいのか!? みたいなことになってしまうんだけど、万言を費やしても語れぬ深い趣きがあるのです。
流離いながら、変わらぬものに焦がれている・・その苛烈さが哀しい。 “聖なる”とは、限りなく信じることの高貴さと愚かさであったろうか。 その二面性をメルヘンの調べに乗せて、詩情豊かに、軽妙洒脱にうたいあげている。
「皇帝の胸像」にもまた、卑屈さを駆逐するような同種の観念が脈打っているんだけど、民族主義に傾き、急速に硬直していく時代性を、苦いユーモアで痛打する色合いが濃厚に刻まれていて、新秩序の否認という小説観が端的に表れています。 裏を返せば、はみ出し者の異邦人が帰れる場所、多言語・多宗教・多民族国家たる唯一の故郷を喪失した著者の慟哭に他ならず、その絶望にノーガードで対峙しているような佇まいが読む側の心をざわつかせずにおかないのです。
「四月、ある愛の物語」は、詩情溢れる空間の美しさが一際でした。 他の二篇に比べて主人公の精神の純度が低いような・・ その分、地上の住人として俗世に踏みとどまれている生命力を感じた気がします。 でもこれは、書かれた時期の違いから余計な勘ぐりをしているだけかもしれません。 もっともっと読んでみたい・・


聖なる酔っぱらいの伝説
ヨーゼフ ロート
白水社 1995-08 (新書)
関連作品いろいろ
★★★
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