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蘆屋家の崩壊 / 津原泰水
再文庫化された“幽明志怪シリーズ”の一作目。 随分前に集英社文庫版で読んだ・・はず。 内容は忘れ果ててたけど、そうそう、この飄々としたユーモアと耽美でおぞましい愉楽を併せ持つ空気感が好きだったんだ。 集英社文庫版所収の「超鼠記」が外されて(シリーズ2作目の「ピカルディの薔薇」へ移行)、代わりに書き下ろし新作の「奈々村女史の犯罪」が加えられた八篇編成。 単行本に収められていたらしい著者による各短篇の覚書き「跋」が、今回、復活収録されています。
三十路を過ぎたフリーター猿渡と、怪奇小説家の伯爵。 無類の豆腐好きで意気投合した食い道楽コンビが、足を伸ばす津々浦々で、幽明おぼつかぬ異景の数々に遭遇する連作短篇集。
怪異がストーリーとして理知的にコントロールされており、言ってみればミステリーとホラーの中間くらいのスタイルで、非常に読み心地の良いエンタメ度。 同時に正統派怪奇幻想譚の風合いを漂わせていて美味なのです。 流暢な擬古風(?)調で綴られる猿渡の一人称スタイルが、男の美学というのか、色気というのか・・ 苦い女難の杯を陶然と飲み干すような、ある種のダンディズムを醸すんだよねぇ。 物語の底に流れる異形への憐憫、昭和ロマネスク的世界観を想わせる気怠い哀愁、不意に突き落とされる暗闇の香気、そのギリギリのラインで往なしてくる素知らぬ愛嬌・・
一話目の「反曲隧道」は短いながらインパクト大で、これだけしっかり記憶に残ってました。 伯爵と猿渡の出会いエピソードに通ずる一篇でもあります。 「埋葬蟲」の気持ち悪さは格別で、しかもホラーとしてのツイストが秀抜なのに・・なんで記憶にないんだろう;;
既にタイトルで一本! な「蘆屋家の崩壊」は、蘆屋道満と八百比丘尼の父娘説をモチーフにした民俗学ベースの作品。 安倍晴明が狐の子とされた由縁にまつわる猿渡の持論は、そのまま津原さんの考察なのかしら?
「猫背の女」は、異常な自己意識の持ち主は相手なのか自分なのかというサイコチックなプロセスを踏みながら、ラストで「かちかち山」の猿渡流解釈に帰結させる辺り、洒脱だなぁと。
寂れた村落の土着信仰とギリシャ神話の幻獣を融合させた「ケルベロス」のラストは、怖気と寂寥を孕んだ謎オチと、 “スクリームクィーン”で首尾照応する滑稽味とが相俟って名状し難い機微があった。
各短篇は比較的ランダムに時系列を行き来し、あまり厳密であろうとはしていないのですが、それでも少しずつ“現在”は更新されていきます。 内界の相克を鮮やかにイメージ化した最終話の「水牛群」で、猿渡の再生を予祝しています。


蘆屋家の崩壊
津原 泰水
筑摩書房 2012-07 (文庫)
関連作品いろいろ
★★
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