空飛ぶモルグ街の研究 / アンソロジー
[副題:本格短編ベスト・セレクション][本格ミステリ作家クラブ 編] 本格推理短篇の年間ベスト10を編んだシリーズで、“回を重ねるごとに読者のお馴染みになってる”らしいんですが、不肖、初めて手に取りました。 タイトルに惹かれて。
本書はノベルズ版「2008年本格短編ベスト・セレクション」(実質的には2007年発表の作品から選ばれてるのだと思う)の文庫化。 で、このタイトル、収録作品の題名の一部を合体させて、それらしいキャッチーな言葉を造るってのが毎回のルールらしい。 ひゃッ、まんまと思うツボ^^; それに、シリーズものや元々連作として組まれた短篇が多かったので、そっちも読みたくなるという芋づるアシストだねこれ。 してやられた。 何篇か既読も混じってましたが、ベストと銘打たれているだけあって粒ぞろいでもあり、また、バランスへの配慮も感じた。 ソリッド・シチュエーションもの、スパイもの、民俗学もの、異国風、時代風、オフビート風、ホラー風、日常の謎系・・などなど独自の個性を活かしつつ、どこかしら“本格”という共通項を漂わせているといった感じの多彩なラインナップにあって、何気に「雷雨の庭で 」の“普通の本格”っぽさが貴重な存在感を発揮してたり。
飛び抜けて面白かったのが「しらみつぶしの時計」。 時間の円環をこじ開ける切れ目とランドルト環というモチーフを見事に共鳴させた傑作。 ガチゴチ論理で押し切るのかと思ったら、ふざけたオチで着地するお茶目っぷりに惚れた。 無敵キャラ的には「路上に放置されたパン屑の研究 」の徳さんと「加速度円舞曲」の貴族探偵が双璧。 好きw ついでに「加速度円舞曲」の推理パートは至極マトモなのがミソね^^  「チェスター街の日」と「迷家の如き動くもの」は、洋風と和風の怪奇幻想的色合いの対比が目映く、ローカルなムードに引き込まれた。 評論の「読まず嫌い。名作入門五秒前」も興味深かった。“ ジャンル定着以前の作品が持っていた間違える権利、バカなことをやらかす権利”の中に、名作の逆説的面白さを見出すという、ちょっと上から目線な読みに頷いてしまう自分がいた。 図らずもプレモダンがポストモダンに見える「トリストラム・シャンディ」の斬新さ(?)を思い出してしまった。

収録作品
しらみつぶしの時計 / 法月綸太郎
路上に放置されたパン屑の研究 / 小林泰三
加速度円舞曲 / 麻耶雄嵩
ロビンソン / 柳広司
空飛ぶ絨毯 / 沢村浩輔
チェスター街の日 / 柄刀一
雷雨の庭で / 有栖川有栖
迷家の如き動くもの / 三津田信三
二枚舌の掛軸 / 乾くるみ
〈評論〉読まず嫌い。名作入門五秒前『モルグ街の殺人』はほんとうに元祖ミステリなのか? / 千野帽子


空飛ぶモルグ街の研究
アンソロジー
講談社 2013-01 (文庫)
関連作品いろいろ

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