※ ネタバレご注意を ※

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | - |
謎解き「アリス物語」 / 稲木昭子 & 沖田知子
[副題:不思議の国と鏡の国へ] ナンセンスの中に秩序を、秩序の中にナンセンスを孕み、“八歳から八十歳までの子供が楽しめる本”とさえ言わしめる「不思議の国のアリス」と「鏡の国のアリス」を、主にテキストベースで紐解くガイドブック。 ペンネーム(Lewis Carroll)からして、本名の一部(Charles Dodgson)をラテン語表記にしてから順番を入れ替えて英語風に戻すという凝りっぷり。 作者の言語に対する度外れた拘りが詰め込まれていて、まさに翻訳家泣かせの作品なのですが、それは同時に、腕の振るい甲斐があり、競い甲斐があるという事にもなりましょう。 (こちら、質も量も素晴らしい→「アリス」邦訳ブックレビュー
薄い本なので当然キャロルの全企みが網羅されているわけではないのですが、要所はしっかり押さえてあったんじゃないかな。 語法や成句のお約束事を文字通りに解体することや、同音異義語を混入することで生じていく会話の食い違いの妙味など、訳本(数冊読んだ程度)で何となくは汲み取れていたことを思うと、翻訳家の方々の貢献に恐れ入る思いが致します。 ここをこう捻ったか!と。 それを今回、キャロルの(もはや魔術的な)言語遊戯癖を目の当たりにする原文に触れながら、厳密に理解させてもらったと言いましょうか。 もとより英語の微妙なニュアンスもわからず、原文にトライする気力もない身には、このくらいのボリュームと平明な解説が程よかった。
文理横断型の才能を遺憾なく発揮して、捩り、駄洒落、連鎖、掛け詞、逆成、換喩、折句、かばん語、屁理屈、矛盾、因果逆転、本末転倒・・ と、言葉と論理を手玉にとって畳み掛けてくる手練手管を直に感じることができたし、それに、言語の冒険を標榜したヌーボー・ロマンの半世紀以上前に言葉の制約へ切り込んでパラドクス領域を回遊してみせたこんな快書(怪書?)が存在したんだよなぁーと、また、新鮮な気持ちで向き合えた気がします。
本書の意図は、“ノンセンスの世界に止揚されたナンセンスを解読する”という切り口で「不思議」と「鏡」にアプローチすることにありました。 日常感覚からかけ離れたバカバカしいナンセンスを重奏させることで浮かび上がってくるバカバカしいが侮れない法則性をノンセンスと捉え、それは、実用性や適切さといった、習慣として身について疑問にすら感じなくなっている空気の調和を掻き乱し、摂理を根底から揺さぶる力を秘めるに至り、ナンセンスと区別されるものとなる・・とった感じだったろうか。 これからは少しばかり違いを意識してみたいものです。
Mock Turtleを生み出すことになったMock turtle soupや、dormouseとティーポットの関係や、Snap-DragonflyのもととなったSnap-Dragonなど、ヴィクトリア朝期の習俗を覗かせる小ネタが仕込まれていたり、Mad Hatterにはモデルがいて、その内輪ネタがいろいろ盛られているらしい背景など、パロディ的な芸の細かさの一端にも触れられました。 「不思議」の巻頭詩と「鏡」の巻末詩が、童謡“Row Your Boat”のイメージで照応し、二つの物語を優しく儚い詩情で包むヴェールの役割を果たしているんですねぇ・・


謎解き「アリス物語」
稲木 昭子 & 沖田 知子
PHP研究所 2010-04 (新書)
関連作品いろいろ
★★
| comments(0) | trackbacks(0) |
スポンサーサイト
| - | - |
C O M M E N T








トラックバック機能は終了しました。