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スタイルズ荘の怪事件 / アガサ・クリスティー
[矢沢聖子 訳] ミステリ黄金時代(謎解き主体の長篇ミステリが最も盛んであった時代)の幕開けをもたらしたと位置付けられるらしい1920年刊行のクリスティーのデビュー作。 私立探偵エルキュール・ポアロの出発点でもあり、ミステリ史上に名を刻む古典です。
英国の田舎屋敷に住む裕福な女老主人が毒殺されるというクラシック(当時としては同時代)な舞台立て。 第一次大戦中、旧友に招かれてエセックス州のスタイルズ荘で休暇を過ごすことになったヘイスティングズ大尉が、滞在中に巻き込まれた遺産相続絡みのスキャンダラスなお家騒動の全貌を、後に手記としてまとめたという体裁です。 かつてはベルギー警察の名刑事だったポアロが、祖国を逃れ、亡命して間もないイギリスで疑惑渦巻く怪事件の謎をいかにして解き明かしたか、ヘイスティングズ大尉を語り手に、その名探偵たる活躍のあらましが記されています。
仰々しいジェスチャー、滑稽なほど丁寧な言葉遣い、ピンと跳ね上がった自慢の口ひげ、潔癖症的な身だしなみ、興奮すると猫のように緑色になる瞳・・ 卵型の頭に小さな灰色の脳細胞を詰め込んだ、風変わりな小男ポアロの名探偵キャラも然ることながら、愛すべき凡人気質丸出しの“モナミ”こと、ヘイスティングズ大尉の助手っぷりも光ってました。(個人的には作家アリスが頭をよぎったw)
ポアロの脳内進捗状況がまるで掴めず、ほとんど叙述トリックの感さえある詭弁で(嘘つき!ってなじりたくなるほどに)まやかされ、煙に巻かれてしまうのだけど、その時々のポアロの所感に読者がこれほど振り回されてしまうのは、考えていることが顔に出てしまう気高い性質(笑)ゆえに、ポアロに本心を明かしてもらえないばかりか、犯人を油断させるカモフラージュ的宣伝要因としてこの上なく貴重な協力者と遇されている(まぁ、はっきり言っておちょくり愛されてる)ヘイスティングズ大尉の一人称テキストだからなのよね^^;
クリスティーというと意外性のイメージがあるんですが、デビュー作にして、その意外性を突き詰めちゃってるような趣きですね。 ある意味、これ以上の意外性があろうかという。 でも、司法制度や薬事知識を応用、超応用した犯行の筋立てに才気と巧妙さを感じますし、人間心理の綾を自在に織り込んだ、緻密で破綻のない物語の論理的構成も見事です。 謎解きの鎖を完成させる最後の輪(物的証拠)を見つける段で、ポアロの潔癖気質が決め手となったりする辺りの抜かりないウィットに心が躍ります。


スタイルズ荘の怪事件
アガサ クリスティー
早川書房 2003-10 (文庫)
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