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黄色い部屋の謎 / ガストン・ルルー
[宮崎嶺雄 訳] 1907年に新聞連載され、翌年に単行本化された最初期の長篇探偵小説ですが、ミステリ史上に燦然と輝く“密室もの”として、今なお愛好家のハートを掴み続ける名品。
聖ジュヌヴィエーヴの森の中のグランディエ城に、科学の研究のために引きこもって暮らす博士と令嬢。 見捨てられたような無住の地の陰鬱とした古城、その離れの“黄色い部屋”で令嬢の身に奇怪極まる惨劇が降り注ぎ・・
まるで幽霊のように鎧戸を通り抜けて行ったとしか思えない犯人、残された夥しい痕跡、容疑者の厄介な沈黙と被害者の奇妙な妨害が発する秘密の匂い、緑服の森番、旅籠屋“天守楼”、闇に響く“お使い様”の鳴き声、黒衣婦人の香水の香り・・
蒼古とした大時代的ロケーションが広がっていて、古典ミステリの中の古典ミステリといった堂々たる風格なんだけど、日本の新本格作家さんたちのせいですっかり馴染んじゃってるから、そうそうこれこれ! みたいな^^; 影響力はかり知れない証拠というものでしょう。
金庫のように厳重に閉め切られた鉄壁の密室の謎を提供する“黄色い部屋”の事件に次いで起こる第二、第三の事件も、広義の密室というべき衆人環視のもとでの人間消失が扱われ、不可能ギミック盛り盛りなのですが、やはりメインの“黄色い部屋”の謎が白眉。力技な物理トリックから発想の転換を図った虚を突く肩透かし技の創造に感服するのはもちろん、なんといってもスマートなのだ。 端正にしてクールな殿堂入り密室トリックを引っ提げたガチムチ本格が、お膝元の英米ではなくフランスで生まれたというのが興味深くもあるのだが、不思議とフランスから生まれるべくして生まれたような気もしてくるのだよね。
密室トリックの他に本作には“意外な犯人”を捻り出す絡繰りが用意されています。 更には、推理を元に証拠を見つける警視庁お抱えの私立探偵ラルサンと、自らの理性の輪の中に入る手がかりをもとに推理する青年新聞記者ルールタビーユの探偵対決の図式になっていて、ミステリ・マインドを擽る趣向がふんだんに凝らされているのです。
まぁ、なにかとルールタビーユの独り占め感が強く、伏線がなかったり、あっても機能的でなかったり、読者が推理の仲間に入れてもらえないので、その意味での満足感は薄いのですが、ルールタビーユの高慢なまでに横溢する若いバイタリティを、フーダニットのミスディレクションとして利用している辺りが達者だなぁと。
これラストどうなんだろうか? まさか・・との思いも過るんだけど、微妙に年齢計算が合わないですかね。 やっぱ違うんだろうか。 でももしそうだったとして、しかも仄めかすだけで寸止めたのなら・・と想像すると目に見えないドラマの奔流が一気に溢れてきて、もう独断と偏見でその気になっちゃって(違うんだろうけど;;)、そこはかとない読後の余韻に包まれて評価がガン上がってしまったのでした。

<追記>
気になり過ぎて調べちゃいました。 どうやら当たりっぽいことが判明・・するも、判ってしまうとあんま嬉しくなかった;; じゃあ調べるなって話なんだけど・・orz
続編の「黒衣婦人の香り」で、その辺の事情にスポットライトが当てられ、赤裸々に物語られるみたい。 自分としては余韻のエンディングが「黄色い部屋の謎」を何より傑作たらしめている(違うw)と思い込み、心浮き立たせていたい気満々なので、勝手にこの一冊で完結ってことにしてそっと胸に仕舞おうと思う。


黄色い部屋の謎
ガストン ルルー
東京創元社 2008-01 (文庫)
関連作品いろいろ
★★
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