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十字屋敷のピエロ / 東野圭吾
東野さんがまだ本格ミステリと付かず離れずの距離にあった初期の頃のド本格作品です。 東野マニアはガッカリかもしれませんが、本格マニアを失望させる要素が見当たらない構築力。 あえて言うなら高橋克彦さんの解説で述べられていた、脇道にそれることなく真っ直ぐ事件の的を絞り込んでいく、その無駄のなさ、隙のなさにケチの一つもつけたくなるくらい^^;
邸宅に暮らす資産家一族の人間関係を背景にした殺人事件ですが、パズル狂の主人、車椅子の美少女、悲劇を呼ぶピエロ人形、事件を解明する謎めいた人形師・・と、形式的コスチュームをスタイリッシュに纏いながら、見えない緊張に縛られた歪んだ空気を醸成させる匙加減も上々。 “十字屋敷”と呼ばれる特異な形状の館を舞台装置にした大胆な物理トリックの華と、無意識のうちの嘘や錯覚をモチーフにした心理トリックの冷気が共存する好もしい遊戯空間でした。
特筆すべきは、頓死した伯母の法要で十字屋敷に一年半ぶりに戻ってきた主人公水穂の三人称一視点というメイン視点に加え、登場人物たちのやり取りを(その都度置かれた場所から)目撃するピエロ人形の一人称視点がサブ視点として挿入されているところ。 殺人の現場をはじめ、主人公には見ることのできない場面の開示が読者に用意されているとは言え、ピエロの“僕”は純粋な傍観者に違いないけれど、あくまで一つの視点の提供者であって、超越的な真理の保有者ではないことが読者にプリズム的混乱を生じさる面白味にもなっていたのだと思います。
二重に仕掛けられた謎の奥行きも期待を裏切りません。 悲劇のピエロ人形と真に共鳴し合うかのような不気味さと悲しみを隠し持つノワールな余韻の生成が見事です。 ラストはピエロ視点の粋な見せ場でもありましょう。
続編があってもおかしくないような終わり方だなーと思ったら、はたして執筆当時は三部作構想だったらしいです。 作者の興味が本格ミステリから遠く離れた今となっては望むべくもないのでしょうが、どんなアイデアだったんだろう・・と、遣る瀬なく夢想してしまいます。


十字屋敷のピエロ
東野 圭吾
講談社 1992-02 (文庫)
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