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黒笑小説 / 東野圭吾
前作“毒笑”の初版が1996年、今作“黒笑”が2005年。 9年のインターバルを経ての“笑シリーズ”第3弾。 主人公にコッテコテの痛い言動をやらせて、嗜虐的に嗤うパターンを多用するのが好みに合わなかったんだけど、前2作に比べたら悪意に満ちた毒素が抑制された分、ずいぶんスマートになった印象。 でも今度は逆に毒にも薬にもならなくなっちゃったみたいな。 無難な作品が多かった気が;; 前半4作が文壇・出版業界ネタの連作スタイル、中後半9作が単発の短篇、という13篇の構成。
群を抜いて面白かったのが「もうひとつの助走」と「選考会」で、文壇・出版業界ネタの中でも特に作家の寒川先生を弄った2篇。 「もうひとつの助走」は、明らかに直木賞の選考過程を皮肉った筒井康隆さんの「大いなる助走」への目配せ作品で、固唾を呑んで結果発表を待つ寒川陣営の会話と心の声のギャップを、めまぐるしい三人称多視点で描いていく展開に笑いのツボが刺激されたし、落とし方もクール。 「選考会」はアイデアが秀逸。 なるほど、そっちか! って。 編集者の生態を揶揄った「過去の人」は殺伐とした笑いの中の一抹のリアリティが薄ら怖い。 単発作品では「インポグラ」の捻り具合と「みえすぎ」の切り口あたりが目を引いたかな。
東野さんが6回目のノミネートで直木賞を受賞されたのが2006年だから、5度目に臨む寒川先生が妙にタイムリーなので、自己パロディ的な洒落をチラッとでも込めてここまで書いたのならカッケェーと思ったけど、1999年が初出なんだよね。 それを知ったら幾らか色褪せて見えてしまった。 もしかして東野さんの5度の落選って寒川先生の呪いだったりして。 違う(笑) 落ちる度にやけ酒飲んで選考委員の悪口言ってたとかなんとか、皮肉な受賞コメントが忘れられないんだけど、ひょっとして寒川先生を念頭に置いた洒落だったりする・・わけないか。 そういうキャラじゃないっぽいし^^; ともかく、その後の東野さんのご活躍に反比例する寒川先生の落ちぶれぶりたるや・・ そこに幾ばくかの“黒笑”が漂うような漂わないような。
タイトルだけ眺めて最もワクワクしたのが「シンデレラ白夜行」。 何がどう“白夜行”なのかなって。 結局これは、魔法とか出てこない「シンデレラ」の隠された真相バージョンといことで、よくあるタイプの童話のパスティーシュなんだけど、ネーミングに座布団一枚。 うん、確かにこれは白夜行。
文庫解説が奥田英朗さんだった。 これ、もしや「巨乳妄想症候群」繋がりで依頼されてないか? と、ニヤニヤしながら読み始めたらとんでもなかった。 ハードボイルド感満載のダンディーな書きっぷりに痺れてしまった。 それはそれとして、「巨乳妄想症候群」の主人公が伊良部先生に診てもらったらどんなストーリーになったんだろうということばかり気になった。


黒笑小説
東野 圭吾
集英社 2008-04 (文庫)
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