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歪笑小説 / 東野圭吾
“笑”シリーズの4作目ですが、路線から逸れました。 前作“黒笑”で扱った文壇・出版業界ネタ4連作の続編としてスビンオフした体裁の連作集。 アイデア・ストーリーというよりも、物語性重視の人間ドラマ趣向。 笑いがないわけじゃないけれど感動ベースへと狙いが大きくシフトしています。 ジャンル的に好みなのは前3作だけど、出来としては本作が一番いいのではなかろうか。 やっぱり東野さんはこのスタイルの書き手なんだなと。
理想と現実の間で苦悩する新人作家と編集者のドタバタコメディ。 本好きなら心躍らせずにいられない・・はず。 しかしなんとも新鮮味が感じられない。 最近の作品なのに、この昭和のオヤジが書きました的な臭さはなんなの? わざとなの? と、げんなりしながら読み進めていくも、ノリに慣れて登場人物に愛着が湧き出すと、段々楽しめるようになっていく。 やはり流石だ。 でも、“わざとなの?” という冷めた思いは最後まで消えなかった。
エンタメ界の新鋭、唐傘ザンゲ作の本格不条理ミステリ「虚無僧探偵ゾフィー」がリトマス試験紙になってて、良さがわかれば意識高い系、わからなけれが低い系みたいなレッテルが登場人物に貼られてたけど、それと売れる売れないはまた別の話だぞと。 所詮、本篇だって売れてなんぼ。 どうせこの程度が読者のお好みなんだろ? と、ページの向こう側から挑発している作者の顔がちらつかなくもなくて。 そこに“歪笑”なる企みの核心があったんじゃないかとさえ薄々思ってしまった。
業界周辺の卑俗なあるあるネタやお馴染みの裏事情など、切り口は多彩だし、トンデモ脚色がどのくらい真実を孕んでいるかいないか、想像を巡らせるのは愉快だった。 そしてこの連作集、モデルが頭をよぎりそうな属性やネーミングがいろいろ出てきて擽られる。 警察小説の大御所である玉沢先生は、明らかに大沢在昌さん。 ハードボイルドをおちょくってる埋め合わせでもありそうだけど、相当にかっこいい役どころ^^ 伝説の編集長やら、美し過ぎる新人担当編集者やらにも頭をよぎる某対象がいたりするのかな。
個人的には、臭いハードボイルドもどき小説「撃鉄のポエム」でデビューを飾った熱海圭介氏がお気に入りなのだけど、東野さんに虐められ過ぎてキャラが変わっちゃったのが残念。 勘違い野郎のままぶっちぎり続けて更なる高みへと邁進し、誰も到達できない“ギャグ小説”の境地を切り拓いて欲しかったわ。 まぁ、リアリティが要求されるドラマ路線に舵を切ってるから仕方ないのかな。 唐傘ザンゲ氏をなんでもっと癖キャラにしなかったんだろう。 マトモな良い子過ぎてつまらん。 まぁこれも、感情移入の出来るキャラを必要とするドラマ路線に・・以下略。
「ミステリ特集」がマイベスト。 辺りを見回し声を潜めて編集者にさぐりを入れる熱海氏のとあるセリフがツボw オチの捻りも最高。 前作に登場した寒川先生のその後を描く一篇「引退発表」は、愛ある茶番劇が醸し出す滑稽味と哀愁がいい感じ。 作品の一部をなす「巻末広告」でさりげなく明かされている更なるその後の消息に微苦笑。 寒川先生への皮肉とオマージュを混在させたウィットが光る。
「小説誌」は、業界のタブーに真正面から言及する短篇なんだけど、ラスト、逆切れ&開き直りの感情論に涙の大喝采って・・なにこれ。 むしろこんなオチしかつけようがない(と言いたい)のだと勘ぐれば、出版社の側に立って作家を揶揄った作者の粋を買いたくなる。 それとも何かはぐらかされたのかな・・


歪笑小説
東野 圭吾
集英社 2012-01 (文庫)
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