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二流小説家 / デイヴィッド・ゴードン
[青木千鶴 訳] ジャンル小説の読者から煙たがられそうな短篇を2篇ばかりアンソロジーで先に読んでいたので、もっとわけのわからんやつを書く作家さんかと思ってたら、いけてないヒーロー系ハードボイルド路線に連なる、律儀なまでにちゃんとした、超ド級の通俗小説、という印象でびっくりだった。 定型的4人のマドンナに囲まれたハーレム状態の主人公とか・・もうね^^; でもこれ、ネタ的に通俗仕様でカリカチャライズしてる節もあるんだろうね。 素なのかパロディなのか悩ましい辺りの曖昧さも魂胆の内っぽい。 ジャンルに対して極めて意識的という意味で、通俗小説(ジャンル小説)に捧げたオマージュ小説のような香りもします。 散りばめられる作中作の紙吹雪を浴びながらケレンたっぷりに演じられる地のストーリー・・ 全篇を貫くイミテーション感が半端ない。
ハリー・ブロックはコアなB級ノヴェル愛好家ご用達のしがない小説家。 本名や経歴を偽った様々な変名や変装を駆使してSF、ヴァンパイア小説、都会小説を書き分けて生計を立てています。 かつてポルノ雑誌の変態ライター“アバズレ調教師”として腕を磨いた経験を活かし、どのジャンルもSM倒錯愛風の濡れ場でちょいちょい彩色するのが持ち味の模様。 最近は高校生の家庭教師・・とは名ばかりの、その実、期末レポートを代作するアルバイトにまで手を出して食い繋ぐありさま。
そんなハリーのもとに、獄中の連続殺人鬼から告白本の執筆を依頼する手紙が舞い込みます。 果たしてメジャー作家にのし上がるためのチャンス到来となるのか・・ ハリー自身が綴る手記としてその顛末が物語られていきますが、手記の体裁をとった起死回生の小説かもしれないという含みも醸し出されていて、実話なのか創作なのか幻惑的なところに面白みがあります。 どちらにしてもハリーが初めて本名で執筆するテキストには違いな・・いのかどうかも疑問の余白を残します。 そしてヴェールの奥の奥では本書をデビュー作とする著者デイヴィッド・ゴードンの影(亡霊)が踊り、初々しい矜持を見え隠れさせている・・
本筋であるミステリのパートはなんとも普通・・というほか形容しようがないのだけど、小説家の目線で現実(もちろん小説の中での“現実”という意味です)を観察しているようなメタ感覚の導入や、“二流作家”たるハリーの持論として乱発される自虐ユーモアのきいた文学論(そんな深いもんじゃないし、とっ散らかり気味ではある)の数々、背景として描かれる現代ニューヨークの素顔など、複合的に読みどころモリモリな娯楽性を保持しています。 抑制が効かず、饒舌に任せて作家としての若さを濫りに放出している感は拭えないんだけど、今後いくらでも腕をあげていくことでしょう。
余談ですが、日本でもロマンス小説のパラノーマル部門がヴァンパイア色に染まってるっぽいイメージはあるのだけど、アレ系ってみんな翻訳モノなのだよね。 ましてや“アーバン・パラノーマル”なるジャンル(ホラーとロマンス小説の中間くらい?)自体、聞いたことない。 B級小説界におけるヴァンパイア信奉って、聖地(?)のアメリカ(2009年)では、“バーンズ・アンド・ノーブルの何ヤードにもおよぶ棚を埋めつくす勢力”らしい・・ へぇ。
あらゆる雑誌の例に漏れず、インターネットが《ラウンチー》誌を廃刊へ追いやった。かつて、テレビや映画が書物を絶滅へ追いやったのとまったく同じように。さらに時代を溯って、ぼくの思い出せないなんらかのものが詩を絶滅へ追いやったように。いや、詩の場合にかぎっては、みずから命を絶ったと言うべきなのかもしれない。
こういう笑いのセンス好きw 表紙カバー袖には著者(ハリーじゃありません)の近影が。ふふ。 狙ってるのかそうじゃないのか、この辺の企みも憎いもんです。


二流小説家
デイヴィッド ゴードン
早川書房 2013-01 (文庫)
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