仮題・中学殺人事件 / 辻真先
初版は1972年。 著者の(小説家としての)デビュー長篇です。 帯に“犯人は読者だ!”の惹句がドーンと掲げられていて、なにやらイロモノギミックの予感にときめいてしまいました。 え? そこバラしちゃっていいの? と危ぶんだんだけど、確かにこれは予め告知した方が正解。 なぜ読者が犯人なのか気になって気になって、もうその吸引力だけで釘づけにさせられる。 で、まぁ、うん。 そういうことね・・という感じではあった^^; この部分に関しては詭弁系というかね。 メタフィクションを装った引っ掛けみたな趣向だったかな。 あっ、言っちゃった;;
短篇をジョイントさせて長篇に組み立てた感じなので、“犯人は読者だ!”のセールスポイント以外にも小粒なアイデアがいろいろ埋め込まれてます。 密室あり、アナグラムあり、ダイイング・メッセージあり。 時刻表トリックのアリバイ崩し二連発は、食わず嫌い気味だったけど楽しかった!
以下、ネタバレ含んでおります。 しかし何と言っても一番心惹かれたのは、小説そのものに施された手の込んだメタフィクション構造。 作者の物語と作者が書いた物語が絡み合って同時進行するパターンだけなら珍しくはないのだが、特筆すべきは二人の作者がこの小説を書いていると主張しているところ。 読み終わった後、どっちが主でどっちが従なのかしばらく悩み抜いてしまった。 これは相互入れ子式というのか、胡蝶の夢式というのか・・ そんな理解でいいのか? 著者が“辻真先”なんだから、やっぱり“辻真先”の方が実質的な上位にはなるってことなのだろうけど、逆に言ったらその差だけだよね。 元々は両方とも著者のペンネームだったらしい。 執筆活動の中で統一、淘汰されていったという背景を重ねて読むと、ペンネームを授かった両登場人物が背負う明暗が感慨深くもあるね。
本篇は、スーパー&ポテトのシリーズ一作目。 超美少女と芋男子の中学生コンビについては、シリーズの歩みとともに成長の様子が追えるみたい。 本篇だけでも冒頭とラストでは、その関係性に青春期らしい変化が見られます。 この二人、探偵と助手ではなくてダブル探偵っぽいのだよね。 彼等が牽引するポップで軽妙なサイドと、犯人への憐憫や死による浄化といったエモーショナルな翳りのサイド(←この辺にはそこはかとなく時代性を感じる)と、何かとてもコントラストの強い小説空間。
当時の漫画文化や、古今東西の探偵小説への言及も多くて、サブカルチャー的なモードが薄っすらと敷き詰められているのも特徴的。 昭和四十年代に書かれたとは思えないくらい古さを感じないのだけど、創元社から復刊された新版にはかなり手直しが入っているのかも。 あっけらかんと罪もなく他作品のネタバレするのがデフォだった時代に、よくもここまで回避したなぁというのが地味な驚きだったりして。 もしかすると現代のマナーに合わせて修正してくれたのかな。


仮題・中学殺人事件
辻 真先
東京創元社 2004-04 (文庫)
関連作品いろいろ

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