あやめ横丁の人々 / 宇江佐真理
わたしの知っている宇江佐作品から思うと、初っ端からあまりにドラマチックな展開で、ちょっと面食らってしまったのだけれど、要は旗本のお坊ちゃんが、庶民の暮らしの社会勉強をする話。 脛に傷を持つ人々との心のふれあいによって立派な武士に成長していくという、とってもわかり易く、誰でも楽しめるエンタメ小説。 盛り上げ処や泣かせ処がしっかりしていて、その分どうしても感情過多で教訓めいてしまうのは仕方ないのかも。
個人的には江戸市井の俗語がいっぱい飛び交っていたり、京伝の戯作がちょこっと紹介されて、主人公の慎之介が、それをパロったりしてるのが楽しかったなぁ。 あとは“あやめ横丁”の見取り図が書けるんじゃないかってくらい、いや・・ミニチュア模型を作りたくなってしまうくらい町の描写が堂に入っていたところが最高。 葉茶屋、一膳飯屋、床屋、煮売り屋、うなぎ屋、油屋、湯屋、薬種屋、蕎麦屋、酒屋、畳屋、質屋、貸し本屋、墨屋、瀬戸物屋、菓子屋、小間物屋・・などなど軒を連ね、裏手には飾り職人や仕立て屋などの居職の家々が点在し、所々に裏長屋へ続く路地があって、木戸番小屋の裏手には稲荷のお堂があって、按摩さんやお医者の先生や岡っ引の親分もいるし、廃屋を利用した寺子屋や獣の肉を食わせる店もある。 通りには振売りの声が木霊している。 周りをお堀で囲まれたこの小さな横丁と、そこでひっそりと暮らす住人たちが、読み進めるうちに愛おしくなってきた。


あやめ横丁の人々
宇江佐 真理
講談社 2006-03 (文庫)
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