ギャシュリークラムのちびっ子たち / エドワード・ゴーリー
[副題:または 遠出のあとで][柴田元幸 訳] 初ゴーリー。 なんとシュールな。 アルファベット順に、その頭文字の名前のちびっ子たちが次々と唐突に26通りの暗澹たるヴァリエーションで死んでいく。 意味や感情の“物語”がないままに、ただリズムに乗って淡々と飄々と。 古風な教訓譚を不条理ナンセンス仕様にアレンジしたパロディみたいな感じだろうか? ゴーリー自身は隠された教訓といったものすらなんにも織り込んでない気がするのだよね。 だからこんなにもそこはかとなく魅せられてしまうのではないかと。 でも(だからこそというべきか)シンプルであるがゆえ、読み手に委ねられた余白は無限大とも言えるわけで、反応はむしろ多種多様であって然るべきなのだと思う。
amazonの内容紹介に中村えつこさんの書評が載っていたのだけど、“これら26人の子どもたちが、私たちの身代わりの人形(ひとがた)として悪魔払いをしてくれる、と思わせる”の一文には目からウロコが落ちた。 その感覚、めっちゃわかる。 無性に訳もなく愛おしさが湧いて、うまく言葉にできないまま、自分は変なのか? と思っていたから、これだ! という気持ちを手にできて有難かった。 自分のイニシャルのちびっ子人形をお守りにしたいような、そんな思いにさせられるのだ。
韻を踏んだ素っ気なく軽やかな文章は、可笑しくて不気味なマザーグース調。 と思ったところで、ふとクリスティーが浮かび、「ABC殺人事件」が浮かんできたのだけども、ちょっとは目配せがあるかな?ないかな? 版画を想わせるモノトーンの線画は、可愛らしくもあり、殺風景でもあり、どこかナイーブで落ち着かない。 このクラシカルなタッチと、とんでもブラックなシチュエーションが相まって例えようのない世界観が醸し出されており、これがどうして嫌悪感をまるで抱けないのだから困る。 本当に不思議だ。 裏表紙にまで目が行き届いていてクスっとなってしまった。


ギャシュリークラムのちびっ子たち
−または遠出のあとで−

エドワード・ゴーリー
河出書房新社 2000-10 (単行本)
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★★★★★
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