うろんな客 / エドワード・ゴーリー
[柴田元幸 訳] 風の強い冬の晩、とある一家の暮らす館に招かれざる珍妙な客が突然やって来て住み(棲み)着いてしまうお話。 これまたシュールですねぇ。
挙動不審モード全開で飄々と好き勝手な振る舞いに明け暮れるマイペースな闖入者と、困惑しつつも鬱々とした生温かい諦念とともに受け入れている家族。 なにかとても虚無的なんだけど、眉を八の字にしながらのクスクス笑いがこみ上げてきてしまうという・・ 抑制されたユーモアの洗練が尋常でないっす。
アリクイみたいなペンギンみたいな変てこな生き物なんなの? とか、なぜに蒼古としたヴィクトリア朝風の家族なんだ? とか、追い出すという選択肢は微塵もないのか? とか(笑) 不条理でナンセンスで不気味可愛い文章のリズム、“うろんな客”の姿形や仕草といい、家族の表情や佇まいといい、モノクロームの線描から醸し出される世界観のすべてが堪らん。
慣例的な枠組みの中に慣例的な節度からちょっと、いや、かなり大胆にズレたシチュエーションを嵌め込む感じなのだよね。 しかもそこには意味性がなく教訓がない代わりに、読者の自由な思念を拘束しない底深さがある。 なんだかほのかに哲学的でさえある・・
感じた気持ちを言葉に置き換えることが非常に困難で歯がゆいのだが、ゴーリーはそういう名状しがたい感情の微妙なピンポイントを華麗に探り当て、擽り、突いてくる天才なのだよなぁ。


うろんな客
エドワード ゴーリー
河出書房新社 2000-11 (単行本)
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★★★★★
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